Asagi's Art News





光と影のソナタ ~ キアロスクーロ2005年10月22日 21時28分37秒

小雨が降り肌寒い一日でした。なにかと話題のプロ野球は、日本シリーズが開幕して、そろそろ大学では学園祭の準備に忙しい時期になると思いつつ上野まで出かけました。この街は、今日から公開されるプーシキン美術館展でにぎわっていました。この美術展は、注目度満点なので日を改めて出かけることにして、今日は、西洋美術館で静かに版画を見ることにしました。

キアロスクーロ

キアロスクーロ、聞きなれない言葉です。明暗という意味があるようです。16世紀のドイツからはじまってイタリアを中心に発展してフランドル、オランダ、フランス、イギリスと広がり18世紀頃に終息した多色刷りの木版画だそうです。日本の浮世絵とは異なる重みを持つ立体感のある版画で、人物や風景を線で表すラインベースと呼ばれる版と明暗を表すためのトーンベースと呼ばれる版を使い刷られています。明暗を作るための色彩は、多色といっても茶系や青系の同系色の大人しい色を用いています。

作品は、ルネサンス期ですから神話や宗教が中心になります。版画ということで、元になる絵画が存在するのですが、ラファエロであるとかティツィアーノであるとか巨匠の名前が連ねられています。だからと言って単なるコピーでなく、それぞれの個性や好みが出ていて面白いです。参考にオリジナルの写真とかも展示されていれば、比較ができて良かったと思うのですが、この展覧会は、あくまでもキアロスクーロ(明暗)にこだわっているようです。

初期のドイツの作品は、明暗といってもはっきりとはしない作品が多いのですが、円熟期を向かえるイタリアの作品では、彫刻を思わせるような立体感を見事に明暗で作り出しています。版画なのでそれほど大きな作品は、ないのですが、さすがにイタリアですね、奥深いものがあります。あさぎは、アンドレアーニの「聖母子と諸聖人」という作品が気に入りました。イエスを抱くマリアの姿に杖を持ったヨハネが描かれるお約束の場面ですが、木版の持つ優しい感触と聖母の愛が重なるよう感じがして、心に染みてくる感じです。宗教的な意味がたくさん描かれているのでしょうが、残念ながら判りません。でも、その伝えようとする主題は、感じることができるのですから絵とは不思議なものですね。

アンドレアーニ
アンドレア・アンドレアーニ「聖母子と諸聖人」

※国立西洋美術館