Asagi's Art News





VIVA! ダ・ヴィンチ ~ ミラノ展2005年10月30日 13時55分52秒

幕張より東には行ったことは無かったのですが、ダ・ヴィンチに会えるとなれば話は別です。雨が降ると天気予報は言っていましたが、なんとか持ちそうな空模様で、ちょっとだけ早起きして遠出をしました。あさぎは、まだ彼の人物画の本物を見たことがありませんでしたので、期待感いっぱいで前日からワクワクでした。本当は油彩の作品が見たいのですが、本物の天才ですから素画でも十分です。気分は、「君待つと我が恋ひをれば、我が宿の、簾(すだれ)動かし、秋の風吹く(額田王:万葉集第4巻488番)」といった感じでしょうか。

ミラノ展

この展覧会は、イタリアのミラノ市と大阪市が姉妹都市ということで開かれたものの巡回として千葉にやってきたようです。作品は、ローマ時代の彫刻からヴィスコンティ家に関わる彫刻や工芸品、ダ・ヴィンチの素画、ルネッサンスとバロックの絵画、そして近代の絵画から構成されていました。あさぎは、彫刻にはあまり興味がないのですが、15世紀に大理石で作られたヤコビーノ・ダ・トラダーテの玉座の聖母子は、当たり前ですが見る角度によってマリアの表情が微妙な変化にだんだんと惹かれていきます。特にイエスを見つめる視線からだと、あさぎのことを見守ってくれているようで幸せな気分になります。

今回のダ・ヴィンチの作品は、いまだに見つかっていない「レダと白鳥」の下絵の「レダの頭部」の素画と最後の晩餐の下絵と思われている「キリストの頭部」のパステル画の2点でした。「レダの頭部」は、とても小さく(20×15cm)筆跡が淡く、近くに寄らないと判らないほど繊細です。しかし、想像していた通りに彼の描く、その表情はミステリアスです。目元や口元の微妙さが、やはり他の画家とは違うのでね、謎めいているとしか言いようがないほと不思議な感覚がしました。そもそもレダは、全能の神ゼウスを誘惑するのですから怪しく官能的なのでしょう。もし、完成した「レダと白鳥」があるとしたら、どんな雰囲気で見るものを誘惑するか想像するだけでも楽しいです。

レダの頭部
レオナルド・ダ・ヴィンチ「レダの頭部」

そんな想像を手助けしてくれた作品が、なんと隣にありました。チェーザレ・ダ・セスト「聖母子と子羊」です。彼は、ダ・ヴィンチの弟子であり共同製作者と言われている人物ですから、ダ・ヴィンチワールドの案内人としては、申し分ありません。作品は、聖母子なので宗教色が強いものですが、構図や背景は、師匠譲りの雰囲気があるはずです。この作品のマリアは、ちょぴり太めなところが、深い母の愛を現していように感じますが、そのマリアやイエスを包み込んでいる背景の不思議な光景は、まさにダ・ヴィンチワールド。なぜこのような絵が生まれてきたのかなど、考えるときりがありません。ただ、美の頂点を極めた作品が存在するのでしょうね、そんな作品にひとめ会ってみたいものだとつくづく思った一日でした。

聖母子と子羊
チェーザレ・ダ・セスト「聖母子と子羊」

※千葉市美術館