Asagi's Art News





花の生き様を描く ~ 中島千波の世界展2005年11月03日 21時07分02秒

もう何年も前のことですが、NHKの趣味講座の番組で中島千波という画家を知りました。たしかこの時は、彼の得意とする花をたのしく描くことがテーマで、優しく指導していたことが印象的でした。その後、いくつかの展覧会で彼の描く花の作品に出合いましたが、美しいという以外に何か精神的な世界があるような感じがしました。この展覧会では、彼の学生時代から還暦を向かえまでの作品に出会うことができるということで日本橋高島屋に出かけることにしました。

中島は、学生時代から日本画を専攻していたのですが、影響を受けた絵画は、抽象画やシュルレアリスムだったそうです。特にマグリットの世界に惹かれていたようで、彼の初期の作品は、日本画でありながら幻想的なイメージの強い作品を手がけています。しかし、その中心は、常に花が置かれていたのが印象的でした。70年初頭には、人物画の作成もしていて、人間の心の本性を見出すような衆生シリーズは、背景が黒く塗られているためか心の叫びが聞こえるような感じがしました。これらを作成するきっかけとしては、当時に世相(ベトナム戦争など)が深く影響していると思われます。

その後、中島を花の画家と呼ばせる作品へと移っていくのですが、彼は花を題材にすることに対して、何年も風雪に耐えながらも可憐にまた力強く一生懸命咲いている花の生き様を描くことが心情であると言っています。あさぎは、ここまで見て来て最初に思っていた彼の花の絵から受ける精神性が少し判ったような気がしまた。それは、日本画とシュルレアリスムなどの精神世界が融合した結果として、あの花たちがあるのだなと思ったからです。そう思いながら代表作である桜の屏風を見ると、しっかりと大きく描かれた幹と無数の桜の花びらから眼には見えない透明なベールのようなものが出ていて、それに包まれているような不思議な安心感を受けました。彼の心が絵ににじみ出ているのでしょう。

坪井の枝垂桜
中島千波「坪井の枝垂桜」

花に対するこだわりはあるようですが、意欲的にさまざまなテーマに挑戦してる画家ということが、風景画や仏画、コラム挿絵などから判りました。なかなか面白い人物です。中でも良かったと思ったのは、おもちゃシリーズといっている花と民芸品のようなおもちゃを組み合わせた作品です。色彩が何処となく南米系の雰囲気をかもし出しており、ラテンのリズムが感じられます。独特の動物のおもちゃもそうなですが、描かれる花が南国に咲くように大きく華麗な姿をしているので、そのように思えるのかもしれません。日本画なのに、なんだか楽しい気持ちなりました。

かとれあ
中島千波「かとれあ」

コメント

トラックバック