Asagi's Art News





ヴェラシーラ ~ 雲の向こう、約束の場所2006年01月06日 22時27分20秒

冬期休暇に映画でも見ようといくつかDVDを買いました。その中にアニメーションの作品を1つ選んでみました。もともとアニメーションは好きなのですが、数多く作られる作品の中でも見たいと思うようなものは、その年に1本あるかないかです。

新海誠は、1人でアニメーションを作ったことで良く知られています。すごいことだと思います。しかしながら、その作品(ほしのこえ)を見たことがあるのですが、とても良いテーマを持っているにもかかわらずロボットなどが出てくるところがいまひとつ受け入れられなかったことを覚えています。

一昨年、劇場公開されたこの「雲の向こう、約束の場所」ですが、とりあえずロボットは出てこないということなので見てみました。前作でも感じていましたが、新海誠は村上チルドレンですね。作品の中にも村上春樹の小説が出てくるほどですから筋金入りと思います。もちろん、あさぎも村上春樹は好きですからこういう表現もあるのかといった感じです。

雲の向こう、約束の場所
新海誠「雲の向こう、約束の場所、2004」

ストーリーは、南北分断された架空の戦後の日本、ユニオン占領下の北海道との国境がある青森で主人公のヒロキと親友タクヤそれと憧れのサユリとが織り成す心模様を描いています。ヒロキとタクヤは、中学生の時に『ヴェラシーラ(美しい空)』という飛行機を作り、北海道に聳え立つ『塔』まで飛ぶことを計画しました。

その計画を聞いたサユリは、自分もその『塔』まで連れて行くようにヒロキとタクヤに約束を交わします。そして、時は経ち彼らにとっての約束の場所は、それぞれの立場で向かい合うことになります。ヒロキは逃げるように東京の高校へ、タクヤは『塔』の秘密に迫るため研究所へ、サユリは病院で原因不明の眠りの中に・・。『塔』の秘密が明らかになるにつれ、それぞれの運命が再び交差しはじめます。

軍事的な緊張とSF的な展開が心の描写に微妙に絡んでいて面白いです。キャラクターは、時代遅れの同人誌的な顔立ちですが、それが逆にノスタルジーを感じさせるようです。さすがにCGなどが良く出来ており、とても綺麗に仕上がっています。音楽や音の付けかたも凝っていて良いです。

世代が多少違うのでそのままでの感情移入はできなところがありますが、難しい背景を除けば主人公が親友と憧れの女性との三角関係に微妙な心模様を素直に見せるそんな作品ではないでしょうか。取り立てて人に勧めようと思う作品ではないようですが、こんな話しも良いかなと思う作品でした。

※雲の向こう、約束の場所