Asagi's Art News





困難に打ち勝つ希望 ~ 陳進展2006年05月04日 10時57分22秒

松涛美術館がある周りは、大人の街である渋谷らしさが残っています。あさぎが過ごした学生時代の思い出の場所も近く、いつ訪れても雰囲気が良く好きな所です。子供ぽい駅前は、大嫌いですが・・。いつもの休日よりは、少ない人ごみにほっとしながら午後の渋谷にくりだしました。

陳進展

陳進・・聞きなれない画家でした。名前から日本人ではないことが想像できたのですが、彼女の描く絵は日本人が求めてきた美しい世界でした。そして、彼女は、その美しい世界からは判らない激動の時代をかけ抜けぬけ、日本と台湾との間で苦悩をした人でした。

いまだに日本、台湾、そして中国の間ではいろいろな問題が解決しないままです。台湾は、1895年に日本の統治下に入り多くの日本文化が入ってくることになります。陳進は、その台湾に1907年に生まれ、日本から持ち込まれた日本画と出会います。

彼女は、才能を認められ日本に留学をすることになり、鏑木清方門下に学び1934年には帝展に入選するほどに実力をつけるのでした。しかし、彼女がまさに活躍をしようとした時代、日本は戦争へと突き進んで行きます。戦争の激化、敗戦、そして、彼女が中国人であるということは、彼女の人生を翻ろうすることに・・。

台湾に戻った彼女には、文化が衝突する渦に巻き込まれます。日本統治下からの開放は、画壇にも影響し日本画の排斥と伝統的中国画(水墨画)の復興の摩擦を生んでしまいます。しかし、彼女は、日本画の持つ繊細さを捨てず奥深い中国画を取り込むという方法で危機を乗り越えます。

今回の展覧会では、彼女の帝展入選前後の作品から台湾に戻り結婚、出産を経て晩年に至るまで作品を網羅しています。美人画、植物画、風景画といろいろはテーマに挑戦しています。初期の作品以外、あまり大きな作品はないのですが、彼女の人生を垣間見るようでおもしろいです。

やはり、目を引く作品は、帝展に入選した『合奏』でしょう。チャイナドレスの女性が2人、椅子に腰掛けて楽器を演奏しています。清楚な顔立ちは、さすがに鏑木清方一門です。モデルは、彼女の実姉とのことで裕福な家庭で育ったという貴賓が漂っています。

合奏
陳進「合奏、1934」

年を重ねるごとに困難を乗り越える力強さが作品から伝わってくるのが不思議です。多くの人たちが国や文化の板ばさみにあい生き抜いてきている中、彼女の明るさや未来に対する希望は、郡を抜き輝き見るものに勇気を与えてくれるようです。

※渋谷区立松涛美術館

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