Asagi's Art News





騙されるな! ~ マルク・シャガール ラ・フォンテーヌの寓話2006年05月05日 21時59分20秒

美しい庭園に囲まれた美しい美術館という印象が、美術雑誌や書籍から感じいて一度訪れてみたかった美術館のひとつでした。しかし、あまりにも遠い場所にあるので、そう簡単には行くことができません。成田空港の手前にあって、横浜からは1時間半以上もかかります。

川村記念美術館

手入れの整えられた芝生、花をつけた草花たちの中に中世を思わせる建物が現われます。暖かいこの日は、とても気持ち良く「わざわざ遠いところを・・」と歓迎されているようでした。美術館の前には白鳥がいる池があって、大好きな人と一緒に散歩ができたらと思いつつ館内に入って行きました。

美術館は、1階と2階に展示室がありました。そして、おもしろいことにこの美術館では、常設展示の作品から鑑賞をするようになっていて、企画展があとにあるという構成で少し変な感じがしました。だから、はじめ鑑賞コースを間違えたかと思ってしまい、1階から2階に上がって企画展になったときには「あれれ・・」といった感じになりました。

常設展示には、印象派、エコールド・パリなど海外の作品の他に日本画や曼荼羅のような東洋的な作品まで幅広いコレクションが見ることができます。ただ、ひとつひとつの作品は、素晴らしいのですが連続して見た時に少しまとまりがないようにも感じました。たぶん、コレクターの趣味の問題だと思いますが・・。

さて、企画展の「ラ・フォンテーヌの寓話」ですが、マルク・シャガールの版画中心に展示がされていました。ラ・フォンテーヌとは、中世のフランス文学者で、その作品は、フランスではとても人気があるそうです。寓話は、イッソプ寓話をベースにして各国の民話などを取りいれ書かれているそうです。

その内容は、子供には難しいともいわれていますが、大人にとってはさまざまな教訓がありおもしろそうです。この寓話は、過去に多くの画家が挿絵を作成していたのそうですが、展覧会では、画商ヴォラールがシャガールに挿絵の依頼したものがメインになっています。

銅板で刷られた版画にポイントなる部分に色をおいていく手法が使われることで、作品にどことなく温かみが与えているように思います。寓話の挿絵なのでその場面の前後には、物語があります。例えは、展覧会のポスターにもなっている『カラスとキツネ』の話しは、こんな感じです。

カラスとキツネ
マルク・シャガール「カラスとキツネ、1930」

カラスが、くちばしにチーズをくわえて木の枝にとまっています。そこにキツネが現われカラスを見上げて、「こんにちは、カラスの旦那。旦那はなんて立派なんだ。その羽は実に見事でこの森に並ぶものなどいない。旦那の声も威厳があるのだろうね。ぜひ、そのすばらし声を聞かせてくれないだろうか?」と言いました。

これにカラスは、有頂天になって喜び思わず声を出してしました。すると、くちばしからチーズが落ちてしまいました。すかさずキツネは、チーズを拾い食べてしまします。そして、キツネは唖然とするカラスに言うのでした。

「ご親切なカラスの旦那、ひとつ覚えておくといい。お世辞をいう者は、それをに耳を貸すもののおかげで生きているんだよ。この教訓は、チーズひとかけらの価値があるだろう。」、これにカラスは、我にかえって騙されたことに気がつくのですが、すでに遅かったということです。

全部の作品に解説があるわけではないのですが、人間の愚かさや教訓の一場面が挿絵として描かれいると思うと楽しいです。また、シャガールというとカラフルな作品しか知らなかったのですが、銅板のモノトーンの世界もまた味わいがあって良いものです。

フランスでは、はじめシャガールをロシアからの異国人として自国の寓話を描くことを拒絶されたそうです。しかし、彼の独自の世界は人々の心を掴む魅力があったため、徐々に認められるようになったようです。この話も寓話のようでなんだかおかしい話しであるように思えるのが不思議です。

※川村記念美術館