Asagi's Art News





平和への想い ~ イサム・ノグチ展2006年05月07日 15時02分32秒

イサム・ノグチの作品は、横浜美術館の常設展示にあるオレンジと黒の石を交互に組み合わせ円形を作っている『真夜中の太陽』で知っていました。大きな作品なのですが、威圧感を見せることはなく、静かに輝いているような感じがします。

真夜中の太陽
イサム・ノグチ「真夜中の太陽、1989」

少し前にちょっとした彼のブームになりました。回顧展もあり見に行きたっかたのですが、実現できなくて残念に思っていました。今回、その横浜美術館で回顧展が開かれので今度こそと思い出かけました。

彼は、国籍や民族の違いで苦労をした人だと聞いています。差別はもちろん、戦時には強制収容所にもいたことがあるそうです。しかし、彼の作品からは、苦労をしたような感じなどないような斬新でユーモラスな雰囲気を漂わせています。とても不思議な造形です。

あさぎは、あまり彫刻のような立体的なアートを得意としませんが、彼に興味を持ったのは、テレビの新日曜美術館の中で紹介された広島の原爆慰霊碑のエピソードでした。もともとは、彼の作品が慰霊碑になるはずだったのですが、彼の国籍が問題になり実現されなっかたということです。

原爆慰霊碑
イサム・ノグチ「広島の原爆死没者慰霊碑(1/5模型)、1950(1992)」

平和を誓うための慰霊碑にそのような問題を持ち出した当時の日本人のあり方が、問われるような気がしてやりきれない思いがしたことを思い出しました。結局、今の慰霊碑は彼のアイデアだけは受け継いだ形になっていることがせめても救いのような気がします。

はじめ今回の展示に、その原爆慰霊碑が含まれていることは知りませんでした。もちろん模型ということですが、そこから受ける印象は、平和への永久の想いに満ちているようです。無言で訴える人たちの魂のような感じさえします。会えて本当に良かったと思います。

※横浜美術館