Asagi's Art News





外国から ~ 若冲と江戸絵画展2006年08月19日 22時41分20秒

外国から見つめるまなざしは、新鮮な感覚で受け入れることができます。日本の中にいては、発見できないことをたくさん教えてくれます。ジョー・プライスもそんなひとりで、彼は江戸時代の天才「若冲」の美をあらためて教えてくれます。

展覧会の開催にあたりテレビや雑誌で取り上げられ、ちょっとした若冲ブームになっていました。たくさんの人で混むことが予想されていたので、あえて雨の日を選んで出かけました。雨ならば出足が遠のくはずと思っていたのですが、同じことを考える人もたくさんいて驚きました。もちろん、博物館の外に並ぶようなことはなく、すぐに会場に入れましたが・・。

若沖

いままで、まとめて「若沖」の作品を見たことはありませんが、ときどきふと出会うと繊細な写実に驚きをおぼえます。なんと言っても彼の描く動物(特に鶏)は、細部にまで正確に観察とその描写テクニックに素直に圧倒されます。

観察だけに数年をかけてから描くという噂は、本当かも知れません。その方法にあてはまらないものもありますが、見ることの出来ない動物にしても想像だけのものでは無いように感じます。これは、江戸時代という時代が自由な発想と表現を許された時代だったからでしょう。

後半の展示で「若冲」ではありませんが、興味をひく展示がありました。 それは、屏風の展示方法です。普通の展示会では、作品に当てる光はフラットに全体が見えるようにするものです。そうすることに違和感は、持っていませんでした。

ところが今回の展示では、その光をまるで部屋に差し込む自然光にように変化させる試みがされていました。朝日のように右から徐々に光を当てていき、お昼になると光が全体を包むように変化し明るくなります。やがて光が左に移動すると夕闇が迫り、そして暗くなっていきます。

本来、屏風は、光の変化を感じることのできる部屋に置かれていたのでないのでしょうか。朝日に照らされあらわれる風景が、時間毎に変化してさまざまな表情を作ります。夕闇の頃には、屏風の中の風景も一緒に闇に包まれる。

ここで、ひとつ気がついたことがあります。屏風の背景になってる金箔地です。金属の表面は、変化する光に敏感で、例え少ない光の変化でも増幅して表現されます。光を取り込む日本家屋にでも、それほど劇的な光の変化は望めません。そこで、金箔を使うことで光を増幅して、その変化を楽しんだのではないでしょうか。

昔の日本人のすごさに感心します。そして、このような感覚に気がついたのが、外国にいたプライスなのですから、日本人は何を感じてきたのかと思うぐらいです。近くにいることで気がつかないことが、たくさんあるように思えます。外国に作品が流出してしまうことは、残念ですがこんな発見が出来るなら許してもいいと思う気もします。

※プライスコレクション