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それぞれの時代に ~ 国宝風神雷神図屏風2006年09月22日 23時02分47秒

風神と雷神が相対する姿は、誰もがいちどは見たことの構図です。江戸時代の俵屋宗達の傑作として記憶にありましたが、尾形光琳と酒井抱一による写しがあることは知りませんでした。この展覧会では、何十年ぶりにこの3点が一同に展示される貴重な機会と聞きました。

果たして宗達のオリジナルとその後の写しにどんな違いがあるのか、興味の惹かれるところです。実物を見ることでしか判らない微妙な部分がきっとあると思います。それは、見るものにしか判らない言葉にはできないものかもしれません。

会場に入るといきなり3点の風神雷神図屏風があらわれます。いきなりメインを見せる演出もストレートでいいものです。部屋の右手に宗達、左手に光琳と抱一の作品が並びます。中央には、それそれの相違を解説した案内がありました。表情の違いや各作者のオリジナル性などかなり詳しいものです。

まずは、本家である宗達を見て行くことしました。いちばん古いものであるためか、色彩については多少くすみがあります。時間の経過を感じますが、その迫力はさすがに国宝と言われるものです。それぞれの神様の構図とバランスには圧倒されます。神様の表情は豊かに瞳が大きいせいなのか、人を超える存在としての威厳があるようです。

風神雷神
俵屋宗達「風神雷神図屏風、17世紀前半頃」

そして、琳派の巨匠の光琳です。色彩は、鮮やかに残っています。解説にもあったのですが、少し人間ぽい感じがしてきたように思えます。ひとめで判る違いは、墨で描かれた雲です。神様の足元にはっきりと、しかも重みがあるように描かれています。

最後に抱一です。いっそう鮮やかな色彩です。全体の感じからは、少しバランスが違うように思います。どうやら屏風の大きさが異なるようでした。酒井抱一の作品は、オリジナルに比べ縦方向に少し大きいと解説にありました。少しの差なのですが、それだけで神様が少し小さく見えるのが不思議です。

日本画の古典で同じ作品を一回の展覧会で見ることができるのは、とても貴重だと思います。微妙な違いもすぐに確認できるのが嬉しく思います。オリジナルである宗達の偉業には驚きますが、それぞれの時代で宗達を越えようとした光琳と抱一も素晴らしい仕事をしたと思うひときでした。

※出光美術館