Asagi's Art News





神秘のジャングル ~ ルソーの見た夢、ルソーに見る夢2006年11月05日 22時19分58秒

どうしても行きづらいところにあるのが、世田谷美術館です。休日には、二子玉川から美術館行きのバスが出ています。しかし、世田谷の細い路地をぬって30分近くもかかる・・やはり陸の孤島です。秋の世田谷路の散策には良いのですが、とても不便なところが残念です。

たいへんな思いでたどり着いた世田谷美術館、今日はルソーの世界が待っています。この不便な美術館なら、余裕をもって鑑賞できると思っていましたが、予想外に混んでいました。やはり、テレビ(NHKの新日曜日美術館)の影響もあるのでしょう。

ルソーの見た夢、ルソーに見る夢

並んでチケットを買い中に入って、展示案内を手にしてみると、展示室は5つありました。全てルソーでないことは判っていましたが、主役である彼の作品を全て最初の部屋に集中させるとは、思いませんでした。いきなりメインディッシュが、出てくる思い切った展示です。

しかし、展覧会の最初の部屋は、常に人が詰まりやすく案の定たいへんな人でした。展示テーマが先行して、人の誘導の配慮が足りなかったのかも知れません。こういうところは、学芸員のセンスが問われる問題なのでしょうか?

ルソーは、独学で絵を学び展示会に公募するというスタイルつらぬきました。批評家からは酷評を受けながらも、作品を発表し続けます。そこからは、作品から受ける素朴さと異なる信念と頑固さを感じます。

これまで彼の風景画は見たことがあったのですが、もっとも彼らしいジャングルと動物の作品は、見たことがありませんでした。彼がフランスで想像した神秘の世界、今回やっと、その作品のひとつである「熱帯風景、オレンジの森の猿たち」に会うことができました。

熱帯風景、オレンジの森の猿たち
アンリ・ルソー「熱帯風景、オレンジの森の猿たち、1910」

うっそうと生い茂るジャングルのみどりは、癒されるような安心感がただよいます。そして、ところどころ補色のオレンジで描かれたフルーツが鮮やかです。ゆっくりとした時間が流れています。現実にはないジャングルですが、そこには動物たちが平和に暮らしています。

彼の世界に憧れた画家がたくさんいたことは、うなずけるような気がします。同時代の仲間が彼と共に素朴派を作り、後世の者は多くのオマージュを捧げることはしごく自然なことなのでしょう。

※世田谷美術館