Asagi's Art News





溶け込む建築 ~ 伊藤豊雄 新しいリアル2006年11月25日 22時41分35秒

芸術と建築の融合は、とてもすてきなことだと思います。人が暮らすということで建築は、近年、バリアフリーとかエコロジーとかが優先されるきているようです。しかし、これらは良くない言い方をすると、人間の都合から生じた結果、後から取ってつけたようなものです。

自然の大地を切り開き、人間が建物を建てて暮らしていく。利益を追求しただけの無秩序な街や戦争、交易、理想などを追求して計画的に作り上げられた都市とさまざまです。しかし、そこには、自然とは異なる人間の作った世界が生まれているのです。

政治家や建築家が、いくら知恵を絞ってもすべての地域で、自然と共存できる建築はできないでしょう。そうかと言って、あきらめないのが人間であって、ほんの一握りの場所ですがいろいろな取り組みをしています。

伊藤豊雄

伊藤豊雄は、いま世界から注目をされてる建築家の一人だそうです。自然と建築をテーマに活躍しているとも聞きましたが、どんな感じなの興味がありました。暮らしの中に建築物は、あふれています。だから、とっぴな建物でも、それほど違和感があるものは少ないと思います。

しかし、それでも彼の設計した建物は、インパクトがあります。それは、最初の展示室に入るとわかります。「これが建物なの?」と思うような奇妙な形の模型が、展示されているのです。

台北のオペラハウスのコンペティションに応募した作品とのことですが、 穴の開いたスポンジというか、洞窟というか、表現にちょっと困る形をしています。曲線と直線を組み合わせた微妙なカーブが、印象的です。

この展示から独創的な建築模型の展示をしていくのだと思いましたが、次の展示室から様子が変わりました。そこには、建築の曲線の部分を実際に鉄筋と板で作った作品の一部があるのです。作品に乗ることもできます。なんとなく建築現場という感じがしました。

協賛会社に建築会社の名前が連なっていたのは、このためかなどと思いました。さらに、次の展示室に進もうとすると「靴を脱いで下さい」と言われ、ポリ袋を渡されました。そして、靴を脱いで部屋に入ると、展示室そのものが彼の建築物と同じように、なみうち起伏のあるひとつの作品になっていました。

直前の展示で構造を見せて、仕上がるとこうなると言うものでしょうか。表面は、白いペンキに塗られていて、表面は硬いのですが一見すると砂丘のような感じがします。その中に彼のいままでの作品の模型が置かれ、それぞれ映像を使って解説していました。

建築展でも、その作品に触れることができる機会は、あまりありません。展示室そのものが作品であることは、すばらしいアイディアです。実際の建築物は、その場に行かなければ見ることもできませんから。

建築作品をどう感じさせるか、この点ですばらしい判断を下したと感じました。時間とお金がかかることですが、体験させることの重要さを知っていたこそ、実現した展覧会だったと思います。

※東京オペラシティ