Asagi's Art News





愛欲と性欲 ~ クリムト2006年12月18日 23時23分29秒

公開初日に見に行っていたのですが、期待通りの作品でなかったこともあり、ブログ記事は書きかけのままでした。伝記ものではないので、美術史の知識を増やすこともできません。かといって、クリムトの世界観を得られることもできず、中途半端な感じがしました。

ジョン・マルコビッチの演技は、すばらしいと思います。独特の気だるい感じがすてきです。彼の存在自体が、エロティックで良いです。ラウル・ルイス監督が彼をクリムト役にしたのは、正解だと思います。しかしながら、作品のテーマは、見えにくくなってしまっています。

少なくとも、クリムトの好色さの表現がきれい過ぎます。愛欲と性欲は、とても生々しいものです。それは、クリムトの絵画からも伝わってきます。「接吻」が持つぎりぎりの愛、「ダナエ」の持つ官能さ、そういうものを期待したのですが・・。

ダナエ
グスタフ・クリムト「ダナエ、1908」

アラーキーこと荒木経惟は、自らの作品に対して「わいせつか?」とたずねられたとき、迷いなく「わいせつです」と答えるそうです。けして、開き直っているわけでなく、彼の信念が見え隠れしてとても魅力的だと思います。

倫理観は、国や地域、個人でもさまざまです。しかし、愛欲と性欲は、人間の根本をなす大切な欲望のひとつで、ちゃんと見つめる必要があります。

クリムトの絵画は、当時のパリでは「わいせつ」と評価されています。だから、それに対してどう戦いを挑んでいったか気になるところです。クリムトの信念をどう映像にするのかで、作品は変わると思います。幻想でなく生身のクリムトを描いてほしかったと思います。

※クリムト