Asagi's Art News





輪廻転生 ~ 横山大観 生々流転2007年01月09日 23時32分32秒

「本日は、無料観覧日です」と、国立近代の入り口に書いてありました。なんとなく不安で「生々流転もですか?」と窓口で確かめてしまいました。すると受付の女性が笑顔で、「ご覧になれますよ」と答えてくれました。なんだかお年玉をもらったみたいで、とても嬉しくなりました。

「生々流転」は、過去に何回か見ていますが、一度にすべてを見るのははじめてです。全長40mの水墨画の超大作です。とても長いので終わりの方は、遥か彼方で霞んで見えます。そして、ゆっくりとその流れを追って行くことにしました。

山にかかる雲の雫からはじまり、小川ができます。下るにしたがい大河になり、さまざまなところを経て海に至り、波となり、最後には渦となる水の一生です。その壮大さには圧倒されます。言うまでもなく水の一生を、人生にたとえていることに気がつきます。

さまざまな出会いや別れと精神的な成長は、とてもドラマティックです。あさぎも人生の半分を過ぎていますから、なんとなく感慨深いです。激しい流れや険しい山は、濃い墨で描き、なだらかな流れや川辺の様子は、薄い墨で描いています。

ときどきあらわれる石像や鳥、人々の様子は、何を示しているのでしょうか? とても興味深いです。海は嵐となり、神である竜があらわれ、渦に飲み込まれる。この絵を描き終えたとき、大観はどんな思いだったのでしょうか?

生々流転
横山大観「生々流転(部分)、1923」

水は、再び雲になるのでしょう。そう、輪廻転生という言葉が思いだされます。人も水の一生のように人生を繰り返すのでしょうか? もし、そうだとしたらと、考えずにはいられません。

※国立近代美術館