Asagi's Art News





美術アカデミー ~ 国立ロシア美術館展2007年06月08日 01時16分17秒

ヨーロッパとは一線を画した文化を持っているロシア。18世紀から20世紀に渡り、守り続けてきた美の歴史を見るような気がしました。頑固なまでに技術にこだわり、伝統を受け継ぐ姿勢に驚くばかりです。

古典絵画をベースにして、緻密で繊細な写実は省略することを許さず、あるものをひとつ残らず描きつくすかのようです。それは、美に対する敬意なのかもしれません。でも、一体なぜなこのようになってしまったのでしょうか?

国立ロシア美術館展

もちろん、厳しい自然の中に生きる者に流れる気質や感覚もあると思います。しかし、それだけではないのような気がします。注目すべきは、美術アカデミーの存在です。どうやらこの組織が秘密を握っているようです。

美術アカデミーと言うだけに、芸術を対して国家が支えるわけですから、厳粛な思想と理念があったと思います。何を学び、何を教えるのか、そして、何を残すのか・・・多くの時間とともに積み上げられていったと思います。ある意味、重いものを感じてしまいます。

ところが、そんな堅い美術アカデミーに中にあっても、画家の個性が見え隠れところがおもしろいと思います。同じような構図、同じような肖像画や風景画でも微妙に違う。当たり前のことですが、この展覧会では重要なポイントだと思いました。

特に気に入った作品をあげるとすると、ニコライ・アレクサンドル・ヤロシェンコの1枚が良い味を出していました。19世紀後半は、ヨーロッパにおける印象派の時代の幕開けの時代ですが、そんなことは何処吹く風で頑固に伝統を守ります。

『女子学生』という作品は、とてもシンプルな肖像画です。何もない背景には、はにかみながら少女が椅子に腰掛けているだけです。しかし、その表情がたまらなく可愛いです。彼女の持つ心の純粋さを画家は、技術と観察力で実現していました。

女子学生
ニコライ・アレクサンドル・ヤロシェンコ「女子学生、1880」

たしかに枠にはめられた感じもありますが、決められたルールの中でも自由に描いている様子が感じられます。モデルの現在、そして未来までも見通しているような作品で、美術アカデミーの伝統を受け継いぐ格式を感じることができるようです。

※国立ロシア美術館展