Asagi's Art News





谷中にて ~ 朝倉彫塑館2007年08月05日 23時14分34秒

谷中に美味しい和菓子屋さんがあってよく行きます。この和菓子屋さんの豆大福は、都内でもトップクラスの実力があるにもかかわらず、マスコミの取材はすべて拒否しているそうです。

それはともかく、その和菓子屋さんに行く途中に朝倉彫塑館があります。企画展はしないようですが、なかなかすてきな建物と生き生きとした作品に会うことができます。屋上にもこんな作品があったりして、彼は何を見ているのでしょうか?

朝倉彫塑館

ここにもイタリアン ~ パルマ イタリア美術、もう一つの都2007年08月10日 23時41分22秒

都市国家であるイタリアには、たくさんの歴史と文化があります。ルネッサンスの華はパルマにはありました。しかし、本当のところパルマがどこにあるのさえ良く判らないのが現実です。地理は苦手なんです・・・。

パルマ

展覧会は、6つのセッションに区切られルネッサンスからバロックに至る様式の変化を楽しませてくれます。作品は、やはりキリスト教に関わるものが多く当時の教会が持つ力の大きさが想像できます。

もちろん、教会を支える貴族の存在があってのことですが、そこがイタリア文化の源なのだと思います。知らなかったのですが、パルマにも時代を代表する画家いました。パルミジャニーノとコレッジョです。

パルミジャニーノは、ある意味な妖艶な感じのする人物を描きます。西洋美術館の左側の看板にもなってる『ルクレティア』などは、貞節を守ったことの証しに自ら胸にナイフを刺す凄惨な場面なのですが、妙に妖しい視線が発せられているような気がします。

コレッジョは、パルミジャニーノとは違い、とても柔らかな感じがして気に入りました。その中でも『階段の聖母』は、フレスコ画で周りの部分が欠けているにも関わらず幸せな感じを漂わせています。

階段の聖母
コレッジョ(アントーニオ・アッレーグリ)「階段の聖母、1522」

どこかの教会にあったのでしょうか? 幸いにもマリアの顔が残っており、優しい目線をイエスに注いでいます。裕福を象徴しているように全体的にふっくらして安定感があります。縦横がだいたい150cmぐらいの大きな作品で、見るものに安らぎを与えてくれます。

今年はイタリア年ということで、たくさんのイタリア文化に触れることができて嬉しいです。多くの画家がイタリアを目指し憧れた。その一部を目の前にできることは、とても幸せなことだと思います。

※パルマ イタリア美術、もう一つの都

視線はどこに向かうのか? ~ ルドンの黒2007年08月12日 22時34分23秒

カラフルなイメージがあるルドンですが、長い間モノクロの世界にいたとは驚きでした。展覧会の題名も『ルドンの黒』ですから、どんな作品に会えるかのと期待をして渋谷に向かいました。

ルドンの黒

もともと、Bunkamuraミュージアムは地下にあって暗く壁も黒なのですが、看板からポスターまですべて黒で統一されていました。最近この美術館は、ちょっとした遊び心持たせるようになっていい感じになって来ました。

さて、ルドンの作品ですがリトグラフが中心です。描かれる世界には、怖いと言うよりもユーモラスな怪物たちがあちらこちらに登場します。彼自身は、オカルト的なものに興味があったようです。

たしかに妖しい世界を描いているのですが、見る人を怖がらせるような感じはしませんでした。日本だと妖怪絵巻と言ったところでしょうか・・怪物を描くことで「もっと世界を見てほしい」、「別の世界が見えるでしょう」と言っているようにも思えます。

作品の題材には、神話や昔話を参考にしているようなのですが、特におもしろかったのは目玉です。一つ目の怪物に目玉の気球とバリエーションは豊富です。そして、その視線は常に上を向いています・・・何を見ているのか気になります。

ルドンの黒
オディロン・ルドン「『エドガー・ポーに』Ⅰ眼は奇妙な気球のように無限に向かう、1882」

今回の展覧会にも美術館が独自に用意したCG映像がありました。ルドンの世界を映像で表現するための試みのようです。エッシャー展のときもそうでしたが、良くできています。たしかにルドンの世界が動き出したら楽しいと思います。このような企画は、これからも頑張って続けてほしいものです。

※Bunkmura

赤と緑 ~ キスリング展2007年08月13日 23時39分12秒

ようやくキスリング展が、横浜に巡回してきました。キスリング展としては15年ぶりだそうです。いつもモンパルナスの画家のひとりとして1・2点の作品にしか出会うことができませんでした。今回、ようやくまとまって彼の作品に会うことができてとても嬉しいです。

キスリング

展覧会は、初期の作品から晩年に至るまでの約60点の展示です。デパートなので美術館といってもかなり苦しい感じなのですが、それでも良いという感じです。

まず疑問だったのが、いつ頃からあの激しい赤と緑を使いはじめたのかでした。しかし、答えはすぐにありました・・・ほぼ最初からです。初期の作品は、たしかに他の画家の影響を受けていて、これはセザンヌ、これはピカソなどと、とてもわかりやすいのですが、赤と緑だけは最初からあります。

もうひとつ疑問があって、いつ頃から肖像画の目が大きくなったのかでした。これは、少し判りづらかったのですが、たぶん絵が売れはじめてきた頃なのかなと思いました。この点については、もう少し調べる必要がありそうです。

それから、キスリングは、判りやすい人のようで、売れない頃のモデルは近親者が多いのですが、売れてくると富豪や女優にモデルが変化して行きます。ただ、おもしろいのは、どのモデルも身だしなみがキッチリとしているところです。

赤い長椅子の裸婦
モイーズ・キスリング「赤い長椅子の裸婦、1937」

ヌードにしてもそれは変わりません。髪を整えて視線をこちらに向ける、ポーズも大胆というよりは美しさを優先しているようです。『赤い長椅子の裸婦』には、赤に対じする緑がはっきりとはありませんが、作品に対する考え方が一貫していることが判ります。

彼の作品は、妖しいまなざしが魅力的です。絵画は何も語りませんが、その瞳は何かを問いかけます。眼は口ほどにものを言う・・・彼の作品にぴったりな言葉かもしれません。

※そごう美術館

こんぴらんさんの宝物 ~ 金刀比羅宮 書院の美2007年08月14日 23時44分46秒

金刀比羅宮というよりも「こんぴらんさん」の方が親しみがあっていいです。しかし、四国・香川の海の神さまということぐらいしか判らないのも事実です。だから、この展覧会で紹介される応挙や若中の作品があるとはまったく知りませんでした。

藝大美術館

藝大美術館の展示は、地下1階と3階の2箇所に別れているのですが、だいたい大きな作品を3階に展示するようにしているようです。今回は、3階に障壁画のある書院を再現していました。ちなみに地下1階は、絵馬や奉納品の展示です。

展示の前半は表書院で、看板やポスターになっている円山応挙の虎の障壁画が出てきます。墨の濃淡で描き分けられた縞模様と実物大に近い大きさは、迫力があります。何匹いるのかを数えませんでしたが、1匹だけ白虎が混ざっています。実に日本人らしい感覚です。

藝大美術館
円山応挙「遊虎図 表書院 虎の間(部分)、1787」

勇ましいはずの虎なんですが、良くみると可愛い表情としぐさをしています。解説にもあってのですが、応挙は実際の虎を見たことがないため、虎の毛皮と猫を参考に描きあげたそうです。だから、大きい猫になってしまっているのでしょう。でも、そこが良いところだとあさぎは思います。

伊藤若中の作品は、展示室の奥の奥書院にあります。繊細な筆使いで草花を図鑑のように描いています。貴重な作品であるため照明がかなり暗いので、部分で見るような感じになってしまったのが残念ですが、鮮やかな色彩はやはり若冲とうなる感じです。

※金刀比羅宮 書院の美

それぞれの想い ~ 自画像の証言2007年08月15日 22時45分17秒

金刀比羅宮の宝物を見たあとにふと目に入ったポスター。自画像という言葉に立ち止まりました。まったくのノーチェックだったのですが、藝大の卒業生による自画像展でした。

自画像の証言

さらに良くみると無料で見られると書いてあるので、とりあえず陳列館という建物に入りました。明治31年(1898年)から現在まで5000人以上が卒業しているとのことで、今回選りすぐりを160点とのことです。

会場は1階と2階で、下には古い作品を上には新しい作品を展示していました。巨匠と言われる人の作品もありますが、やはり若い頃の作品なので少し雰囲気が違います。とてもエネルギッシュな感じがするところが良いです。

自画像の課題は、洋画の重鎮である黒田清輝が学生に課したものだそうです。本物はありませんでしたが、藤田嗣治などはその課題に対して大いに反発を持っていたとのことです。

しかしながら、自画像の課題提出なしには卒業ができないらしいので、しぶしぶ描いた人もちらほらいたようです。また、これが自画像なのと思うような奇抜な作品を提出する人もいます。いずれにしても提出した作品は、後世に残されていくわけですからそれぞれの想いがあるのでしょう。

あさぎのデッサンの先生も藝大出身で、自画像を置いてきたそうです。先生曰く、「大学は最初から自画像の代金を授業料から引いているのだからしかたない・・・」と言っていました。ちなみに先生の専門は抽象画で、まともに描いたかどうかは話してくれませんでした。

※東京藝術大学大学美術館

美術論? ~ 森村泰昌 美の教室、静聴せよ2007年08月26日 23時56分41秒

コスプレおじさんのイメージが強い森村泰昌ですが、はじめての大掛かりな個展とのことでした。インスタレーションと言うには、少し理屈っぽい美術論を展開する珍しい展覧会でした。

森村泰昌

まず会場に入ると鑑賞にあっての細かい指示があります。彼は、今回の展示を学校の講義と位置づけ、ホームルームからはじまり1時間目から6時間目と講義をして最後にテストまで強要します。

音声ガイドをホームルームの前に渡され、彼の講義を聞きながらの作品に対面していきます。美術は自由に見るのと考えられていることに疑問を投げかけ、製作側の意思通りに見せることが目的のようです。

彼自身が作品の中にあって、論理で知性を揺さぶります。フェルメール、ゴッホ、ダ・ヴィンチと美術史の中でも重要とされるものを選んで、この角度から見て、こうように感じるべきと語りかけます。

確かに、鑑賞のしかたを指示されるのは、はじめてです。妙に違和感があって逆におもしろものになっていると思います。最後に三島由紀夫の市ヶ谷の演説に行きつくのですが、あぁ、なるほどと感じさせる知のインスタレーションがそこにあります。

最後のテストですが、最近よく目にする美術検定のような問題が出題されます。正解しても不正解でも卒業出来るようです。ちゃんと卒業証ももらえます。ここまで徹底して鑑賞者に介入する姿勢は、評価に値すると思います。

※横浜美術館

海の男 ~ アルフレッド・ウォリス展2007年08月29日 23時32分27秒

海に面した新しい美術館です。横須賀ですが、どちらかと言うと浦賀の方が近いのかもしれません。京急で馬堀海岸に出て、さらにバスで観音崎京急ホテル前までちょとした小旅行です。まだまだ日差しも厳しい夏の午後、海に貨物船がゆっくり進んでいます。

横須賀美術館

今回の展覧会は、そんな海を感じさせてくれるアルフレッド・ウォリスという、素朴な船の姿を描くイギリスの画家でした。彼は、70才を過ぎてから絵を描きはじめた元船乗りです。もちろん、独学ですが海を愛した優しい暖かさが作品から伝わってきます。

同じ時代、フランスでは、エコール・ド・パリの画家たちの華を咲かしていました。しかし、彼はそんなことさえ知らず、自分の好きな世界を描いていたのでしょう。画材さえ選ばず、キャンバスはどこにでもある厚紙、絵具はペンキです。

若い頃から共に暮らしてきた海が大好きで、残された人生を謳歌しているかのようです。誰よりも多くの海の表情を知っている。優しさも、厳しさも、すべてを知っているからこそ描けるのかもしれません。

横須賀美術館
アルフレッド・ウォリス「青い船、1934」

画面いっぱいに描かれた船には、海の男のロマンが満ちています。仕事場であり、家庭であった海・・・一枚一枚心に刻みながら時が満ちるまで描き続けるのです。

※横須賀美術館