Asagi's Art News





さくらエスケープ ~ 谷中霊園2008年04月01日 21時56分30秒

いつもようにお花見の季節がやって来ました。今年も上野公園に向かいました。お天気が良いのでたくさんの人でにぎわっていました。大好きなお菓子でお茶にしたかったのですが、難しい状況に・・・そこで、今回は谷中方面にエスケープです。

谷中霊園

下町散策として人気のスポットですが、桜の意外な穴場だったりします。藝大のわき道から日暮里に向かうと谷中霊園があり、お墓の真ん中の通り沿いに上野公園にはおよびませんが見事な桜があります。

谷中霊園

ゆっくり時間が流れるようで、日本人で良かったと思ったりします。お墓の皆さんに感謝をしながらお菓子とお茶を頂きました。いよいよ新しい季節です。気を引きしめていきたいですね。

桜散る季節 ~ モディリアーニ展2008年04月09日 00時39分04秒

桜は、満開を過ぎて花びらが散りはじめてきました。日差しの中は、暖かく気分も春爛漫となってきます。上野公園にはおよびませんが、新美術館の周りにも桜の木があり、たくさんの花を咲かせています。この季節だけの特別な風景です。

新美術館

モディリアーニは、そのドラマティックな生きかたもさることながら、独特のフォルムを放つ肖像画に多くのファンが集います。ここ最近、さまざまなアプローチで彼の回顧展が開かれています。さて、新国立美術館ではどのように見せてくれるのか、とても楽しみしていました。

モディリアーニ展

テレビの美の巨人たちでも早々に取り上げられました。彫刻からの転身の経緯と絵画に対するアプローチが、彫刻と同じであるなど興味深い内容でした。それに、ジャンヌとの出会いやその愛の形にも心惹かれます。生前に満足な成功は手にできませんでしたが、それがまた魅力のひとつなのかもしれません。

モディリアーニ展

作品の展示は、オーソドックスな時代順です。まず、彼が彫刻家としてパリを訪れ、石と挌闘しながら生まれでた下絵からはじまります。アフリカ美術の影響を受けた作品で、シンプルで美しいフォルムをかもし出しています。

何枚も描かれた『カリアティッド』は、女神であり建物を支える柱の部分になるとのことです。少し残念なのは、今回の展覧回にモディリアーニの彫刻がないことです。彫刻がひとつでもあれば、もっと下絵に緊張感が出て良かったと思います。

カリアティッド
アメデオ・モディリアーニ「カリアティッド、1913」

モディリアーニは、結局この『カリアティッド』の彫刻は、体力的な問題で完成することができなかったそうです。確かに彼の風貌から考えれば無骨な彫刻家には、向いていないようにも思います。最近では、彫刻もすてきだと思うようになりましたが、やはり色彩豊かな絵画の方が好きなので、彼には申し訳ないですが彫刻家をあきらめてくれたことに感謝しています。

さて、展覧会も折り返し地点を過ぎると代名詞の首の長い肖像画があらわれます。今回は、彼の唯一の個展に出た裸婦もあります。時代的には問題作とされていますが、かつてのビーナスと同じポーズでよりセクシーなすてきな作品です。

ジャンヌの肖像画は、異なる雰囲気の作品を並べて配置しています。明るく微笑み瞳のあるジャンヌ、アフリカイズムを感じる帽子かぶったジャンヌ、そして、めずらしく横を向いたポーズをとるジャンヌです。どの作品も他の作品に比べるとサイズがひと回り小さいのが特徴です。

大きな帽子を被ったジャンヌ・エビュテルヌ
アメデオ・モディリアーニ「大きな帽子を被ったジャンヌ・エビュテルヌ、1918」

年表を見てみると、彫刻家を断念したのが30才(1915年)のときです。絵画に転向してすぐにジャンヌと出会います。ときに個展を開き、娘が生まれ・・・35才(1919年)で眠りについてしまいます。

短いですが内容の濃い時間だったと思います。上手く行かないことの方が多かったのかもしれません。それでも頑なに自身のスタイルを守り、すばらしい作品を数多く残してくれました。この桜散る季節は、彼の人生と重なるような気がします。

モディリアーニ展
※国立新美術館

昭和ノスタルジー ~ 木下孝則展2008年04月14日 20時12分59秒

みなとみらい地区も高層の商業施設やマンションが次々に出来上がり、低層の横浜美術館はその影に隠れる箱庭になってきたように思います。市民の文化施設との役割をはたすかのように、地味な展覧会が続きますが、なかなかおもしろい作品を多く紹介していると思います。

横浜美術館

今回もまた地元横浜に縁のある画家「木下孝則」を紹介しています。彼は、大正から昭和にかけて活躍した正統派の洋画家といえます。フランス留学の経験もありますが、写実を中心に活動を行ないプロレタリア美術運動やシュルレアリスムの影響も受けていきます。

佐伯祐三らとともに「一九三〇年協会」を作り積極的に発表をしていくのですが、前衛的な作品が台頭してくると会を脱退して、写実に戻ることで独自の世界観を作っていったようです。作品の解説にもあったのですが、昭和の時代を感じさせるノスタルジックな光景が作品から伝わってきます。

横浜美術館

展覧会は、ベイシックな回顧展であるため初期の作品から晩年に至るまでを一定のボリュームを持って紹介しています。写実に徹底する感じが初期の作品からも伺えます。人物が中心でありどことなく「藤島武二」の作品に近い印象を受けます。人物を描く光と影の使い方がとても丁寧です。

途中から気付いたのですが、彼はとても美しい人が好きなようです。細身でしなやか、そんな感じの人物を多く手がけています。その中でも特に印象に残るは、『M君像』という作品です。描かれている人物の妖しさとM君というキーワードからモデルが美輪明宏であることが判ります。テーブルに腰掛、カードを並べる姿がとても美しいです。

木下孝則展
木下孝則「M君像、1956」

人物を描く画家は、花もまた愛しているようです。最近では、スタイリッシュに改良されたバラが花屋にならんでいますが、彼の描くバラは古いタイプの大輪のバラです。その存在感に圧倒されるさることながら、彩りも鮮やかにすばらしいです。

木下孝則展
木下孝則「バラ、1960年頃」

また、商業的な作品も多く手がけているようで、週刊誌(週刊朝日)の表紙を飾っていたころもあったそうです。身近なところで活躍していたようですが、なかなか気がつかないものです。しかし、確かにそこに昭和があったような気がします。

横浜美術館
※横浜美術館