Asagi's Art News





桜散る季節 ~ モディリアーニ展2008年04月09日 00時39分04秒

桜は、満開を過ぎて花びらが散りはじめてきました。日差しの中は、暖かく気分も春爛漫となってきます。上野公園にはおよびませんが、新美術館の周りにも桜の木があり、たくさんの花を咲かせています。この季節だけの特別な風景です。

新美術館

モディリアーニは、そのドラマティックな生きかたもさることながら、独特のフォルムを放つ肖像画に多くのファンが集います。ここ最近、さまざまなアプローチで彼の回顧展が開かれています。さて、新国立美術館ではどのように見せてくれるのか、とても楽しみしていました。

モディリアーニ展

テレビの美の巨人たちでも早々に取り上げられました。彫刻からの転身の経緯と絵画に対するアプローチが、彫刻と同じであるなど興味深い内容でした。それに、ジャンヌとの出会いやその愛の形にも心惹かれます。生前に満足な成功は手にできませんでしたが、それがまた魅力のひとつなのかもしれません。

モディリアーニ展

作品の展示は、オーソドックスな時代順です。まず、彼が彫刻家としてパリを訪れ、石と挌闘しながら生まれでた下絵からはじまります。アフリカ美術の影響を受けた作品で、シンプルで美しいフォルムをかもし出しています。

何枚も描かれた『カリアティッド』は、女神であり建物を支える柱の部分になるとのことです。少し残念なのは、今回の展覧回にモディリアーニの彫刻がないことです。彫刻がひとつでもあれば、もっと下絵に緊張感が出て良かったと思います。

カリアティッド
アメデオ・モディリアーニ「カリアティッド、1913」

モディリアーニは、結局この『カリアティッド』の彫刻は、体力的な問題で完成することができなかったそうです。確かに彼の風貌から考えれば無骨な彫刻家には、向いていないようにも思います。最近では、彫刻もすてきだと思うようになりましたが、やはり色彩豊かな絵画の方が好きなので、彼には申し訳ないですが彫刻家をあきらめてくれたことに感謝しています。

さて、展覧会も折り返し地点を過ぎると代名詞の首の長い肖像画があらわれます。今回は、彼の唯一の個展に出た裸婦もあります。時代的には問題作とされていますが、かつてのビーナスと同じポーズでよりセクシーなすてきな作品です。

ジャンヌの肖像画は、異なる雰囲気の作品を並べて配置しています。明るく微笑み瞳のあるジャンヌ、アフリカイズムを感じる帽子かぶったジャンヌ、そして、めずらしく横を向いたポーズをとるジャンヌです。どの作品も他の作品に比べるとサイズがひと回り小さいのが特徴です。

大きな帽子を被ったジャンヌ・エビュテルヌ
アメデオ・モディリアーニ「大きな帽子を被ったジャンヌ・エビュテルヌ、1918」

年表を見てみると、彫刻家を断念したのが30才(1915年)のときです。絵画に転向してすぐにジャンヌと出会います。ときに個展を開き、娘が生まれ・・・35才(1919年)で眠りについてしまいます。

短いですが内容の濃い時間だったと思います。上手く行かないことの方が多かったのかもしれません。それでも頑なに自身のスタイルを守り、すばらしい作品を数多く残してくれました。この桜散る季節は、彼の人生と重なるような気がします。

モディリアーニ展
※国立新美術館