Asagi's Art News
書簡の秘密 ~ マティスとボナール展 ― 2008年05月01日 22時32分24秒
昨年、川村記念美術館を訪れてからもう1年がたちました。豊かな自然と余裕のある敷地の施設はとてもすてきですが、すぐそばに成田空港とちょっと出かけるには気合いが必要です。何と言っても横浜からは遠いのです。
今回は、日本屈指のロスココレクションの展示ルームの改装とマティスとボナール展というちょっと興味深い企画展もあり、気合いをいれて行ってきました。あいにくの雨の日ですが、木々の緑は水を得て生き生きとしています。
佐倉駅から送迎バスで美術館に向かいます。ちょっと古くなった感じのバスでしたが、とっても助かります。雨も小降りになりしだいにあがって来ました。美術館の前にはちょっと大きい池があり、白鳥さんが出迎えてくれました。このお庭は、本当にすてきです。
以前来たとき、マーク・ロスコの展示室は1Fの中央部分のところにあり、展示方法も普通に展示してある感じがしていました。しかし、1Fの奥に新しく作った展示室は、楕円形の部屋でロスコの赤い抽象画が栄えるように床がシックな黒にして、照明もやや暗めで良い感じの仕上がりです。
どうしても川村記念美術館は、常設展を見てから企画展となる逆の発想しているところが特徴の美術館です。下手をすると企画展がおまけのような印象を受けかねないところもありますが、美術館でゆっくり過ごすスタイルには良いのかもしれません。いろいろな展示のしかたがあって良いと思います。
ロスコルームから2Fにあがり、いよいよマティスとボナールの企画展がはじまります。マティスとボナールは、書簡を通して交流をはかり互いの作品に影響与えあったと聞きます。しかし、マティスはモダンアート的な印象で、ボナールはちょっと地味なナビ派の代表という感じがあり、何を共有していたのだろうと興味がわいてきます。
ピエール・ボナール「化粧室の裸婦、1907」
展示の最初は、ボナールでとてもアカデミックな作品が日本美術の影響を受け入れ徐々に変化をしてきます。風景画というイメージもあったのですが人物画も手がけていて、特にバスルームでの何気ない女性の姿をとらえた作品は、ちょっと良いです。
最近のグラビア写真のような生々しさがない、とても自然な雰囲気がすてきです。もちろん、作成の目的も大きく違うのですが、人の暮らしの一場面をとらえる作品はとても安心感があって好きです。
マティスの作品も洗練されたデッサンやスケッチをところどころに配置して、けして最初からモダン的な作品を手がけてはいなかったことを示しているところが好印象です。短い時間で画かれたデッサンやスケッチは、画家の技量が明確に現れます。マティスのすごさをあらためて実感しました。
アンリ・マティス「赤い室内、青いテーブルの上の静物、1947」
そして、何と言っても色彩が良いです。ボナールとはまったく違います。しかし、なんとなくですが共通点があるような気がしてきたのはなぜだろうと思いました。もしかしたら秘密は、彼らの交わした書簡の中にあるのかもしれません。
書簡は直接会って話すのとは違い、想像力を使い互いを想いながら交流をします。だから、その想いは形や表現方法は違っても同じものだっだと思います。精神的な支えとして互いを認めあう。これがマティスとボナールの共通点だったのかもしれません。
※川村記念美術館
今回は、日本屈指のロスココレクションの展示ルームの改装とマティスとボナール展というちょっと興味深い企画展もあり、気合いをいれて行ってきました。あいにくの雨の日ですが、木々の緑は水を得て生き生きとしています。
佐倉駅から送迎バスで美術館に向かいます。ちょっと古くなった感じのバスでしたが、とっても助かります。雨も小降りになりしだいにあがって来ました。美術館の前にはちょっと大きい池があり、白鳥さんが出迎えてくれました。このお庭は、本当にすてきです。
以前来たとき、マーク・ロスコの展示室は1Fの中央部分のところにあり、展示方法も普通に展示してある感じがしていました。しかし、1Fの奥に新しく作った展示室は、楕円形の部屋でロスコの赤い抽象画が栄えるように床がシックな黒にして、照明もやや暗めで良い感じの仕上がりです。
どうしても川村記念美術館は、常設展を見てから企画展となる逆の発想しているところが特徴の美術館です。下手をすると企画展がおまけのような印象を受けかねないところもありますが、美術館でゆっくり過ごすスタイルには良いのかもしれません。いろいろな展示のしかたがあって良いと思います。
ロスコルームから2Fにあがり、いよいよマティスとボナールの企画展がはじまります。マティスとボナールは、書簡を通して交流をはかり互いの作品に影響与えあったと聞きます。しかし、マティスはモダンアート的な印象で、ボナールはちょっと地味なナビ派の代表という感じがあり、何を共有していたのだろうと興味がわいてきます。
ピエール・ボナール「化粧室の裸婦、1907」
展示の最初は、ボナールでとてもアカデミックな作品が日本美術の影響を受け入れ徐々に変化をしてきます。風景画というイメージもあったのですが人物画も手がけていて、特にバスルームでの何気ない女性の姿をとらえた作品は、ちょっと良いです。
最近のグラビア写真のような生々しさがない、とても自然な雰囲気がすてきです。もちろん、作成の目的も大きく違うのですが、人の暮らしの一場面をとらえる作品はとても安心感があって好きです。
マティスの作品も洗練されたデッサンやスケッチをところどころに配置して、けして最初からモダン的な作品を手がけてはいなかったことを示しているところが好印象です。短い時間で画かれたデッサンやスケッチは、画家の技量が明確に現れます。マティスのすごさをあらためて実感しました。
アンリ・マティス「赤い室内、青いテーブルの上の静物、1947」
そして、何と言っても色彩が良いです。ボナールとはまったく違います。しかし、なんとなくですが共通点があるような気がしてきたのはなぜだろうと思いました。もしかしたら秘密は、彼らの交わした書簡の中にあるのかもしれません。
書簡は直接会って話すのとは違い、想像力を使い互いを想いながら交流をします。だから、その想いは形や表現方法は違っても同じものだっだと思います。精神的な支えとして互いを認めあう。これがマティスとボナールの共通点だったのかもしれません。
※川村記念美術館