Asagi's Art News





相思相愛 ~ フェルメール展2008年10月05日 23時48分55秒

それがジャパンマネーと言われても、すぐそこまでやって来てくれるのはこの上ない喜びです。フェルメールに対して、日本人ほどその魅力と価値を評価している民はないと思います。だから、ご褒美としてこんな島国に同時に7点もの作品が集まってきたのだと思います。

フェルメール展

まだ寒い頃、東京都美術館の改装前の大イベントとして、フェルメール展が発表されました。既にさまざまなメディアで紹介、批評がされていますが、自分の眼で見るまでは影響を受けずにいようと思っていました。

絵画は第一印象が大事です。先入観を持って対面すると肝心な部分が見えない場合があります。だから、今回もなるべく入ってくる情報を最小限にして来るべき時を待つことにしていました。

オープニングから2ヶ月近く経ってしまいましたが、この時期を狙いようやく会うことができて本当に嬉しかったです。やや落ち着いたとは言え、30分の待ち時間はその人気の裏づけです。また、美術館でも最高の演出をするため入場規制をかけるなど、老舗美術館として他をリードするような配慮があり感心しました。

施設は古くなって来たけれども、センスが違うと言いたげな展示でした。1階はフェルメール以前のオランダ絵画の展示で、もちろんフェルメールの師匠ともされるピーテル・デ・ホーホの作品もしっかりと配置します。

期待をさせる作品をなにげなく展示するところが良いと思います。そして、いつもメインを配置する吹き抜け部分は、さり気なく通り過ぎさせ2階への階段を急がせするのでした。

あさぎの予想では、3階あるフロワーのどこか一角にフェルメールを集中させて配置すると思っていました。7点もの作品数から1階での展示はないとみていて、最近よく注目作品を置く2階の奥の部屋ではないかと予想しました。

予想は半分あたりました。違っていたのは2階の全スペースを使って7作品を展示していることでした。各作品の間のかなり大きなスペースを作る。なかなか頑張って考えたと思うのと今回の作品の傾向から自然に考えればこうなるとも納得しました。

まず、フェルメールの初期の大きな作品である『ディアナとニンフたち』と『マルタとマリアの家のキリスト』を配置して、続けて注目の『小路』を配置していました。フェルメールのファンであれば小さい作品の方がなじみがあると思うのですが、古い大きな作品を前半にもってくるのは正解だと思います。

フェルメール展
ヨハネス・フェルメール「ディアナとニンフたち、1655」

『ディアナとニンフたち』は、神話を題材にしたフェルメールの初期の作品です。思ったよりも大きな作品であり、聖書を扱った『マルタとマリアの家のキリスト』とともにフェルメールのらしくない作品で批評もさまざまあります。

フェルメール展
ヨハネス・フェルメール「マルタとマリアの家のキリスト、1655」

好き嫌いが分かれるかもしれませんが、光のあたり方や鮮やかな色彩はとてもきれいにで、十分に堪能できる作品だと思います。彼がまだ画風に迷い、どのような方向に行くかのか試行錯誤していた作品だと思うと非常に興味を覚えます。

フェルメール展
ヨハネス・フェルメール「小径、1658」

『小径』は、2枚しかない彼の風景画のひとつであり、前々から注目をしてきた作品です。印象は以外に大きいと感じました。繊細に建物の壁を描いているさまが、なんとも言えず良い感じです。壁の落書きや路地に隠れる人が何をしているのか、とても気になります。いつまでも見ていたい、そんな作品です。

そして、後半は奥の部屋にあります。最初に『ワイングラスを持つ女』があり、鮮やかな赤のドレスに視線が釘付けになります。そして、『リュートを調弦する女』が続き、『絵画芸術』の代わりにやって来た『手紙を書く婦人と召使い』、噂の『ヴァージナルの前に座る若い女』が最後を飾ります。

フェルメール展
ヨハネス・フェルメール「ワイングラスを持つ女、1659」

赤いドレスの女は、謎めいたほほえみを投げかけます。そして、フェルメールの定番の構図である左窓からの光、タイル張りの床・・・不思議に落ち着くこの構図です。また、ヴァニタス画のような謎かけがあるとも言われています。人は謎が大好きなのかもしれません。

フェルメール展
ヨハネス・フェルメール「リュートを調弦する女、1663」

フォーカスがすこしぼやけているように光が揺れる画面です。女はリュートを持ち単調な音が聞こえるように引き込まれるような感じのする作品です。画集では手前の机のあたりが真っ暗でなにがあるのか気になっていましたが、なんとそこには椅子がありました。やはり、本物を見なければ判らないことがたくさんあるのです。

フェルメール展
ヨハネス・フェルメール「手紙を書く婦人と召使い、1670」

本当は8枚目の作品になる予定だったのですが、『絵画芸術』の来日キャンセルによって、注目が出たと思える作品です。これも良く題材になる手紙が描かれており、郵便という当時の最先端のコミュニケーションツールがいかに生活に溶け込んでいるかを知る場面であると思います。

もちろん、誰にどんな内容の手紙を書いているのは、判りません。夫への近況を知らせるものでしょうか、それとも、秘密の恋人への想いを綴っているのしょうか、想像はつきません。ただ、ゆっくりとした時間がながれるフェルメールの世界が広がっていきます。

フェルメール展
ヨハネス・フェルメール「ヴァージナルの前に座る若い女、1663」

真筆か偽物か、世間はそんなことばかり気にします。『ヴァージナルの前に座る若い女』も良くそんなことを言われます。しかし、そんなことを気にして作品を見てもおもしろくありません。真筆か偽物かは、たいした問題ではなく、作品に出会ったとき心に何か伝わってくれば、それは本物なのだと思います。

この作品にも他の作品と同じようにとても魅力を感じます。あさぎはもちろん本物であると思っています。わざわざ日本までやって来てくれて、とっても嬉しいですし、魅力もたっぷり持っています。自分の感じことを信じれば幸せは簡単に手に入ります。

毎日いろいろ大変なことがあって、頑張ってやって来ている・・・そして、大好きなフェルメールの作品に会えることの喜びはなんとも言えません。今年最大のプレゼントをもらったようで満足ですが、絵画との出会いも相思相愛の関係でいるのなら必ず会えるような気がしました。

今回は、フェルメールの方から会いに来てくれました。いつかこちらからも会いに行かねばなりません。また会いましょうと言葉をかけ会場を後にしました。

フェルメール展
※東京都美術館
※フェルメール展

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