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神を迎える風景 ~ ヴィルヘルム・ハンマースホイ展2008年10月25日 13時38分53秒

知らない画家に出会うと、つも絵画はとても深い世界だと実感できます。ハンマースホイは、北欧の繊細な画家です。日本でははじめて聞く名前かもしれませんが、母国スウェーデンでは誰もが知っている国民的な存在と言われているそうです。

彼が描く世界からは、冷たい空気と強い日差しを感じることができます。静寂という言葉がぴったりする感じです。もちろん、行ったことはありませんが、北欧とはそういう場所なのかもしれません。

ハンマースホイ

ハンマースホイは、人物を描くときあまり正面のからのポーズがありません。後ろを向きその表情を伺うことはできません。身に付けている服も地味な黒が多く、息苦しさはありませんが重い感じします。しかし、そこに描かれている人たちは、妻や家族、とても身近な存在なのです。

風景画においても人物は描き込まれていません。しかも、どの作品も雪が降る前のようなどんよりとした感じに仕上げられています。ガイドの映像にあったデンマークの街並みとは、だいぶ違っていたので意図的にそうしているのだと途中で気がつきました。

ハンマースホイ

妻や家族、そして、賑わう街や通りをなぜ静寂な世界に閉じ込めてしまったのかは、彼自身にしか判らないのだと思います。しかし、絵というものは描く人の心が反映される面を持っているので・・・彼の目指した美の追究はとても静がで、謎めいているのかもしれません。

同じ部屋の風景が何枚も描かれているのですが、そこにも妻以外の人物は描かれることはありません。ハンマースホイと妻の住むアパートが何枚も何枚も描かれます。その中にはシュルレアリスムのように、椅子の脚がなかったり、ピアノが壁とひとつになっているものもあるのです。

ハンマースホイ
ヴィルヘルム・ハンマースホイ「陽光習作、1906」

しかし、何と言っても窓から差し込む光がとても印象的です。朝の日差し、昼の日差しと時間の変化を感じることができます。生活感のない部屋、白い扉が外の世界とをつないでいるのでしょう。

彼自身あまり体調が良くないこともあって、外に出かけることは少なかったのかもしれません。だから、身近なところにある美の追究をしていったのではと思います。その先にあるものはと考えてみたのですが、もしかすると静寂の世界にこそ神が宿る。それを彼は待っていたのかもしれません。

北欧にはキリスト教以前から神話が根付いていています。信仰をするかは別として心の底に流れる民族の歴史のようなものが、やはり彼の中にもあったのだと思います。その神を迎える風景をハンマースホイは描き続けていたのかもしれません。

※国立西洋美術館
※ヴィルヘルム・ハンマースホイ展

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