Asagi's Art News





山河あり ~ 犬塚勉展2009年08月25日 22時52分21秒

奥多摩のせせらぎの里は東京の西にあります。東京と言っても周りを山で囲まれた自然豊かなところです。横浜線、八高線、青梅線と乗り継ぎ御岳という駅まで…はっきり言って遠いです。せせらぎの里美術館は電車で行くところではなく、駅からも遠いので車を使ったほうがたぶん便利でしょう。

犬塚勉展

ただ、気になる作品を知ってしまった以上、行くしかないだろうと思い頑張って行って来ました。日曜美術館では、あまり知られていない画家の特集をすることもあり、犬塚勉もまたその一人でした。

テレビでは、そこにある自然を細かく観察して丹念に描かれていて、とても緻密であり本物がみたいと思わせるような作品でした。彼は、同じ時代に生きて…最後は作品を極めるため山に入り命を落としてしまいます。画家としてはこれからだという時の出来事ですが、作品は残り何かを語りはじめます。

さて、展覧会ですが、会場のせせらぎの里美術館は古民家を改築したような感じの建物で、それほど大きくはありません。作品も30点ほどのささやかな感じです。同じようにテレビで知って訪れた人や奥多摩に来たハイカーたちで意外に盛況でした。

地元多摩の風景がそこにあります。そして、森、野原、原生林、そして河と作品は展開します。作品からは孤高の中で修行を積む僧侶のような寡黙さと、丹念に仕上げられた写実が伝わってきます。例えるなら高島野十郎の描く世界に近い感じがします。

犬塚勉展
犬塚勉「梅雨の晴れ間、1986」

『梅雨の晴れ間』は、テレビでも取り上げられた作品ですが、自宅の庭に自然の力強さと光の陰影の美しさに心ひかれます。描かれているのは草木は、人が丹精を込めて作ったものでなく、台地の根付く雑草たちです。そんな彼らも美しい花をつけ、命の尊さまであらわしているようにも思います。

伝えたいことの半分も残せずに死んでしまったと思います。しかし、残った作品は、これからも強い意志を伝えていくのだろうと思います。帰り道に川に面する遊歩道を歩きました。自然の力強さと美しさが作品と重複して感動がよみがえり、気持ちの良い一日となりました。

※せせらぎの里美術館