Asagi's Art News





淡い朱が闇を包む ~ 速水御舟展2009年11月18日 00時17分42秒

新しい美術館は、恵比寿にあります。恵比寿駅からは、小さな渋谷川を渡り、なだらかな坂道をしばらくのぼっていきます。あまり斬新な建築の建物ではなく、周りに溶け込んだオフィスビルのような感じの美術館です。1階のスペースには、念願の喫茶室もあるようです。

速水御舟

展示室は、地下になります。階段の壁に加山又造の陶板壁画『千羽鶴』が展示され、いかにも日本画専門の美術館であることを強調しているようで良い感じです。速水御舟展はオープニングではありませんが、山種美術館の今年一押しの展覧会のように思います。また、御舟の代表作の『炎舞』も、なかなか会うことの出来ない作品でとても良い機会に恵まれました。

初期の作品からのオーソドックスな展示です。最初に水彩やスケッチが ありましたが、子供の頃からとても絵の上手であるとすぐに判ります。観察力があり繊細で細かい作品が目を楽しませてくれます。会いたかった『炎舞』は、比較的若い時期の作品のようで前半部分に展示されていました。

イメージでは、漆黒に朱で描かれた炎と言った感じだったのですが、漆黒ではなく、淡い朱が闇を包むようなもわっとした感じのものでした。炎に舞う蛾の描写の細かさには驚きます。妖艶で妖しい炎が虫たちを引きつけ、命を吸い取っていくような気がします。

速水御舟
速水御舟「炎舞、1925」

これ程のすごい絵を描く人なのですが、人物画は苦手だったようです。人物画に取り組んだ頃のデッサンがいくつかあったのですが、だいぶ苦労をしていたことが伝わってきました。しかし、あきらめないところが御舟のすごいところで、徐々に完成系に近づいていきます。

残念なことは、はじめての人物画の大作の作成途中で亡くなってしまったことです。今回、その下絵が展示されていたのですが、本当にもう少し彼に時間があったら、新たな評価がされていたと思わせる良い作品でした。最後まで次の一歩を踏み出すため努力をする。とても大切なことだと思います。

※山種美術館

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