Asagi's Art News





縄文浪漫 ~ 国宝 土偶展2010年01月02日 23時42分24秒

今年最初の展覧会は、国立博物館の土偶展です。博物館では「博物館で初もうで」なる企画で、正月2日から開館で頑張っています。寅年にちなんだものなので、何となくおめでたい感じもしますが、今日は特別展の方へと足を運びます。

土偶展

普段なかなか展示を行わない本館の5号室という、本館に入ってちょうど中央の階段の下にあるところで展示が行われいました。あまり大きな部屋ではないので、入口を入ると全体が見渡せてしまいす。

個々の土偶は、あまり大きいものではありませんので、ガラス展示ケースの方が目立ってる印象を受けます。しかし、展示間隔に工夫がされていており、そこそこの混雑ですが少し待てばじっくり鑑賞できます。

何と言っても土偶とて国宝指定されている3点が同時に公開されています。長野で見つかった「縄文のビーナス」、青森で見つかった「合掌土偶」、北海道で見つかった「中空土偶」と、いずれも4000年もの歳月が過ぎた縄文時代の作品です。もちろん、宇宙人とも言われた「遮光器土偶」の展示もあります。

縄文のビーナス
「縄文のビーナス、、縄文時代中期(前3000~前2000)」

特に気に入ったのは、「縄文のビーナス」です。女性としての安定感と魅力が伝わってきます。素朴さを感じることも出来ますが、ある意味計算された美を凝縮させているように思います。お腹が大きいことから妊娠しているようにも思え、女性の神秘性をも含んでいるようです。

縄文時代に文字がなかったことで、土偶がなぜ作られたかは伝承されていません。しかし、いろいろと想像をかき立てられます。土偶は、すべてが女性であることから、女性を中心とした母系社会だったのではとか・・・まさに浪漫と言えます。年のはじめ、古代からの美を継承できるとても魅力的な展覧会でした。

※東京国立博物館(2009年12月15日~2010年2月21日)

美人薄命にあらず ~ 清方ノスタルジア2010年01月04日 01時28分29秒

この展覧会が、実は2009年最後に見た展覧会でした。大晦日の午後、サントリー美術館は、人もまばらでゆっくり鑑賞できました。美術館に申し訳ないと思いますが、このような状況がよりベターとなります。

鏑木清方

この展覧会は、題名にノスタルジアとしているように、明治から昭和の風俗や暮らしに想いをはせるという狙いがあるようです。しかし、清方と言えば美人画となり、時代という大きなアプローチの試みが必ずしも良かったのかなと思うところありました。

清方の美人画には、ひとつの形というものがあって人気があると思っています。繊細な日本画の技術と伝統的な構図、この組み合わせで近代日本の美人を決定づけている思います。また、日本人の持つ情緒や季節感を巧みに取り入れ、憧れの日本人像としているようにも思います。

もちろん、清方は美人画以外にもたくさん作品を残しています。それらは、仕事というよりもライフワークと言うべきで、本当に清方が描きたかったものなのでしょう。たぶん、そこを展覧会から見てほしいのだと思いました。・・・とは言うものの美人薄命にあらずで、元気な美人達は展覧会のテーマごと飲み込んでしまいました。

※サントリー美術館(2009年11月18日~2010年1月11日)

創造と破壊 ~ No Man’s Land2010年01月15日 11時01分31秒

大使館というのは、日本にあっても外国であって異なる文化の香りがします。そんな、大使館のひとつであるフランス大使館では、役目を終えた旧庁舎が現代アート発表の場に生まれ変わりました。期間限定ですが、フランスらしい楽しい企画です。

フランス大使館は、麻布という都内でも高級でとても静かなところにあります。細い路地をたどって大使館の前まで行くと、その場には不似合いな段ボールで出来た何やら凱旋門を思わせるような黒い門が出現します。

No Man’s Land

No Man’s Land

建物はあちこちにペインティングがされています。日本やフランスを意識した作品もたくさんあります。もちろん、見ただけでは何だか判らないものあります。廃棄物なのか作品なのか…現代アートらしい光景が広がります。

No Man’s Land

フランス大使館の旧庁舎は、戦後間もない時期に建てられたそうです。ヨーロッパを代表する大国ですが、中に入ってみると意外にこぢんまりとしたたたずまいでした。建物内の各部屋も小さく感じ、秘密基地といったところでしょうか…

No Man’s Land

No Man’s Land

フランス、日本以外のアーチストも参加しているようです。テーマは創造と破壊で、そのままといった感じがしますが、そのストレートな感じに勢いのようなものが伝わってきます。ちょっとワイルドと言った感じです。

No Man’s Land

No Man’s Land

今回は昼間に行ったのですが、曜日によっては夜も鑑賞が可能とのことで、同じ作品でも違った表情を見せてくれるのではと思います。アートは、身近なところにあって何かを語りかけてきます。

No Man’s Land

この後に壊されてしまうフランス大使館の旧庁舎自体が、ひとつの作品であるように最後の輝きを放っているいるように思いました。アートが自然にある国、フランスならでは粋なこころみに敬意を贈ります。

※フランス大使館(2009年11月26日~2010年2月18日)

ダンス・ダンス・ダンス ~ ルノワール 伝統と革新2010年01月30日 23時47分40秒

近づきすぎると嫌がられる・・・『ブージヴァルのダンス』は、そのような作品ではなのですが、見方によっては見えないことないような気がします。ダンス3部作のひとつである『ブージヴァルのダンス』は、ルノワールが画風を変化させる少し前の作品です。

ルノワール展
ピエール・オーギュスト・ルノワール「ブージヴァルのダンス,1883]

すべては楽しく、幸せな時間を絵の中に閉じ込めることに集中していた時期だとも思われます。しかし、実際には印象派としての光への追求と、自分自身が描きたいもの要求の間で大いに悩んでいた時の作品のようです。

縦長の画面はとても興味深いと思います。まず男性の黄色い帽子と女性の赤い帽子に目がいきます。帽子が意味するところは、職業や地位の象徴であるような話を聞いたことがあります。しかし、本当のところはどうなのでしょうか?

華やかな女性のドレスに対して、男性のスーツはいまひとつ決まっていない。もともと、男性をモデルにするのは好きではないように思いますが、ちょっと微妙なバランスです。男性は背伸びして良いところを見せようとしているのかもしれません。

ルノワール展

女性の手を無造作に握り、もうひとつの手で腰を抱き、絶対に手放したくはないとの想いが伝わってきます。やっとの思いで手に入れた瞬間なのか、それとも、去りゆくものへの名残惜しさなのか、表情が帽子に隠れいるため判りません。もちろん、それを意図したものでしょうが・・・

この先にあるべきものは? どこに行くべきなのか? 美しい空間の中で自問しているように思えます。…ルノワールの悩みは、この何年後かにすっきりします。その答えを導いたのは、妻であるアリーヌなのですがこの話は別の機会に考えることにして、いまは楽しいダンスを楽しみましょう。

※国立新美術館(2010年1月20日~2010年4月5日)