Asagi's Art News





また逢う日まで ~ ボルゲーゼ美術館展2010年04月01日 00時26分43秒

今回のボルゲーゼ美術館展が終了すると、しばらく改装でお休みする東京都美術館です。とにかくあちこち古い建物で、バリアフリーと言うものは、ほとんど付いていません。お決まりの見せ場があって、なくてはならない美術館のひとつですが、しばらくは辛抱です。

最後の展覧会ですが、主役は二人います。まずは、貴公子ラファエロです。彼の『一角獣を抱く貴婦人』は、以前は加筆が加えられていたそうです。肩のショールがあり、右下に描かれていたユニコーンが消されたいたそうです。解説には、何故加筆がされたかまでは説明がありませんでしたが、何かしらの意図があってのことだと思います。

ボルゲーゼ美術館展

何かの圧力や強制力によってオリジナルに手が加えられてしまったのです。とても、この絵の価値を理解しての行為だとは思えません。現在は、加筆された部分はきれいに排除されラファエロの描いた姿をとりもどしているのがなによりです。

『一角獣を抱く貴婦人』の第一印象は、言わずと知れたダ・ヴィンチのモナリザです。表情や背景などは少し違いますが、全体の構図や雰囲気がとてもよく似ていると思います。また、ユニコーンは、ダ・ヴィンチの『白貂(てん)を抱く貴婦人』の一部のようで、ラファエロがダ・ヴィンチの気にいった部分を組み合わせたことが想像できます。

そうなると、後ろの二本の柱が気になります。ダ・ヴィンチのモナリザには、諸説あって元は『一角獣を抱く貴婦人』のような柱が描かれていた説などがあります。ちょっとミステリーの謎解きに迫ることができそうな感じです。

ボルゲーゼ美術館展
ラファエロ・サンツィオ「一角獣を抱く貴婦人、1506」

そして、もう一人の主役はカラヴァッジョです。バロック美術に大きな影響を与えている問題の男です。光と影、優美な肉体を画面の中に余すところなく表現していきます。『洗礼者ヨハネ』のモデルは少年ですが、まだ未完成である体にも彼の得意とする力強さが垣間みることができます。

あまり明るい画面ではないのですが、つたの緑と少年がまとう布の赤が補色となっており際立っているのが印象的です。破天荒な人生からは、想像し難い完成された美しさががそこにあります。カラヴァッジョの作品をもっと見たくなります。

いよいよ、これで都美館ともしばしのお別れです。公募展は、新美術館に引き継がれてしまい元気がなくなった感じさえしました。これから耐震補強や改装を十分にして、また元気な都美館になってほしいと思います。

※東京都美術館(2010年1月16日~2010年4月4日)