Asagi's Art News





手の中にあるもうひとつの絵画 ~ 挿絵本の世界2010年04月13日 22時32分07秒

本の挿絵を描くことは、画家にとって当座の現金収入だけなのでしょうか? 古今東西たくさんの画家が本の挿絵を手がけています。物語の一場面や雰囲気を演出する挿絵は、簡素なものから本格的なものまで様々です。展覧会では、挿絵の専門家から巨匠と呼ばれる人たちの作品もいくつかありました。

挿絵本の世界

テーマに分かれていますが、基本はルネサンスから近代までの作品を時代順に紹介していると思います。その中で目を引いたのは、アルフレッド・デューラーの聖書の版画でした。モノクロの力強い画面構成は、挿絵というよりもひとつの作品であるようの感じます。聖書が伝えるべき教えをより印象的に展開しています。

挿絵本の世界
アルフレッド・デューラー「黙示録より四人の騎者、1498」

それから、古い作品の中にも手塗りや多色刷りのカラーの作品もあります。やはりその中では、アルフォンス・ミュシャの作品がきれいでした。原画やポスターなど大きな作品も見たことがありますが、コンパクトな版画もなかなか良いものです。本の一部となり手の中にあるもうひとつの絵画の世界と言えます。

展覧会の題名は、本当はもっと長くて「挿絵画の世界 きれい、カワイイ、怖い 本と版画のステキな関係」となっています。きれい、カワイイ、そして、怖いのテーマで展示がされているのですが、それほど厳密には分かれていないように思いました。

それよりも、近代に近づくごとに華やかさが増し、モダンな感じになってくるのおもしろいと思います。はじめて出会う作家の作品もたくさんいてとても新鮮です。後半には、マネとか、ピカソといったビックネームが出て来るので飽きない構成になっているところがとても良いです。

版画だけでもいろいろなアプローチで楽しめることを証明している展覧会でした。美術館が最寄りの駅から離れているマイナス面もありますが、版画に特化したコレクションのあり方は、高い評価に値すると思います。

※町田国際版画美術館(2010年4月10日~2010年6月6日)

コメント

トラックバック