Asagi's Art News





モンマルトルのパリ祭 ~ モーリス・ユトリロ展2010年05月16日 22時32分34秒

損保ジャパンのビルから見える風景も変わって来ました。前回来たときは、まだモード学園のコクーンタワーは出来ておらず、代々木のNTTドコモのビルが見えましたが、もう見ることはできません。ちょっと視界が狭くなったようで残念です。

ユトリロ

さて、パリを愛した男の作品にまた逢うことが出来ました。ポスターの告知によると全作品が日本初公開となるとのことです。ずいぶんたくさん作品があるのものだなと思ってしまいます。たしかに、ユトリロは絵を描くことだけに生きた時期もあったと思いますが…

画家としての評価は、アルコール依存の頃の「白の時代」の作品の方が高いようです。しかし、その後の「色彩の時代」は、それまでの暗さを一掃して、鮮やかなパリの街で好感が持てます。

ユトリロは、好んで同じ風景や場所を何度も描いています。パリの街角、教会、居酒屋(ラパン・アジルやムーラン・ド・ラ・ギャレット)など…。今回、その中でも珍しい風景があり驚きました。それは、パリ祭の風景で、『モンマルトルのパリ祭』との題名が付いていました。

ユトリロ
モーリス・ユトリロ「モンマルトルのパリ祭、1948」

パリ祭と言えば、クロード・モネの作品が鮮やかで印象に残っていますが、ユトリロのパリ祭もなかなかすてきです。小さなスケッチブック(F4)ほどの大きさですが、フランス国旗がたなびき人物も描かれています。もし、他の画家の作品と一緒にあったら、これが彼の作品とすぐには判らないと思います。

にぎやかで楽しいパリ祭に、ユトリロも大いに盛り上がり、その様子を残したのだろうと思います。展覧会のサブタイトルに孤独な画家とありますが、この絵からはそのような感じは全くありません。たぶん、この頃のユトリロは結婚もして、母ヴァラドンの束縛から解放されていたのだと思います。

人生は長いですから、いろいろなことがあると思います。ユトリロもまた同じように苦労したり、悩んだり、笑ったり、穏やかだったこともあったと思います。また少し、偉大な画家の人生を覗くことがでたことは、本当に良かったと思います。

※損保ジャパン東郷青児美術館(2010年4月17日~2010年7月4日)