Asagi's Art News





新たな進化の創造 ~ フセイン・チャラヤン展2010年06月08日 00時07分10秒

あいかわらず東京都現代美術館の当日券は、素っ気ないプリントアウトで、半券のコレクターからすると実につまらないものです。合理的とか、エコロジーとかを引き合いに出せば成立するかもしれませんが、これもひとつの芸術であり、非合理的で、反エコロジーでも良いと思います。しかし、このスタイルこそが芸術であると言われると…

そんなことは良いとして、今回の展覧会は、ファッションシーンで知名度のあるフセイン・チャラヤンのインスタレーションが展開されるとのことでした。ファッションの世界は、商業ベースで流行(モード)として動いていることもあり、芸術として捕らえることはあまりないと思われます。

フセイン・チャラヤン

ファッションの中には、深く考え抜かれた芸術性や問題を投げかけるメッセージ性を多く持っています。ただ、表現するものが、人の身にまとう衣服であることからバリエーションも多くなり、衣服よりも手にした人たちの方に注目が集まってしまう傾向にあります。

今回のフセイン・チャラヤンの作品は、生身のモデルではなくマネキンが身にまとっています。そのため、作品に対してより注意深く接することができます。動きがないので、じっくりと細部を観察できるのです。また、コンセプトごとに空間が演出されていることもあり、彼の世界に引き込まれるようです。

個々の作品についての感想もあるのですが、全体として思ったことがあります。例えば、身に着ける衣服の多様性は、形や素材を限定しないのです。そして、見据える未来の距離によって、それらは複雑に形が変化していきます。

現在、人は、地球上における理想の形に進化したと言っても良いと思います。学者たちは更なる人の進化を予測しますが、劇的な環境などの外的な変化がなければ、今後大きな進化は期待できないと思います。

だからこそ人の進化は、自らが造りだす衣服が鍵を握っているのかもしれません。衣服は、人の造り変えることなく異なる生命にすることができるように思います。ファッションとして人が衣服を身につけることによって、新たな進化の創造がはじまるのです。

※東京都現代美術館(2010年4月3日~2010年6月20日)