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女帝 ~ カポディモンテ美術館展2010年07月07日 23時11分16秒

ナポリにあるカポディモンテ美術館から歴史ある古典絵画が上野にやって来ました。解説によるとカポディモンテとは「山の上」を意味していて、美術館は文字通りナポリの丘の上に建てられているとのことです。ナポリでは国立考古学博物館と共にイタリアを代表する国立の文化施設になっています。

ブルボン家のカルロ7世(1734年~1759年)の宮殿がベースとなったカポディモンテ美術館には、当初、ブルボン家およびカルロ7世の母であるエリザベッタ・ファルネーゼから受け継いだファルネーゼ家の収集品(特に絵画)がコレクションされたそうです。現在は、ルネッサンスからバロック、そして、19世紀に至るまでの多くの作品を所有しています。

カポディモンテ美術館展

今回の作品数は、いつもの展覧会より少ない80点で西洋美術館でも2つの展示室のみ展示となっていました。テーマは、イタリアのルネッサンス・バロック美術、素描、ナポリのバロック美術の3つです。とても修復が行き届いていて、400年の歴史があることを感じさせない美しさです。

ティツィアーノ、エル・グレコと偉大な画家の作品が続きますが、やはりいちばん気になる作品はパルミジャニーノ(1503年~1540年)の妖しい女性の肖像画になります。パルミジャニーノは、ローマを中心に活躍したと言われています。ルネッサンスの3巨頭から影響を受け、特にラファエロから多くを学び取ったようです。

カポディモンテ美術館展
パルミジャニーノ 「貴婦人の肖像(アンテア)、1535」

『貴婦人の肖像(アンテア)』の女性は、貴族の婦人とも娼婦とも言われています。一説ではパルミジャニーノの愛人ともありますが、彼は同性愛主義者との噂もありますので、何とも言えないところがあります。

とにかくこの作品は、彼女の見つめる瞳が怖いです。視線は、やや高めにあるため、作品から少し離れないと眼が合いません。薄暗い緑の背景が肌の白さを引き立ていて、妖艶とう言葉がぴったりかもしれません。ただ正面を向いているのではなく、右肩がやや手前に出ていることから微妙なひねりがあります。

右手側に上着、マフラー、手袋を着けて重厚さを持たせているのですが、中心から左手側にかけては素手が見え、さらに胸元(乳房の一部)が少し見えています。この大胆さと鋭い眼光からプロの女性と思ってしまうのでしょうか…

しかし、じっくりこの作品を見ていると、この女性の教養の高さ、品格の高さが感じてきます。経済的にだけではなく、政治的にも力があるように思えます。対抗する勢力に対して啓示を与えているのかもしれません。このように女帝のような睨みを利かされたら、一族の結束は堅くなることでしょう。

※国立西洋美術館(2010年6月26日~2010年9月26日)