Asagi's Art News





アートシティ ~ 京橋界隈20102010年07月11日 12時38分35秒

ギャラリーは個性的でさまざまアートの情報発信をしているのですが、売買の要素が加わることで少し敷居の高いイメージが一般的です。特に京橋など老舗も多い地区のギャラリーは、特別な個展でもない限りなかなか立ち寄ること難しいと思います。

『京橋界隈』というイベントは、その敷居の高さをギャラリーがぐっと下げてくれます。街の中に『京橋界隈』のシンボルが入った旗が掛かっていることで、いろいろ不安を取り除いてくれます。また、協賛しているギャラリーも多く(18ギャラリー)もあり、かならず興味を引く展覧会があるはずです。

ギャラリーもイベントに合わせ、おもしろい企画や紹介したい作家・作品を展示するように準備をしてきたと思います。もちろん、新しい顧客層の開拓やギャラリー間での競争という意味もあり、とても成功しているイベントであるように思います。

それでは、個性的なギャラリーの中から、気になったところをいくつかピックアップしてみたいと思います。まずは、京橋駅からすぐの同じビル内の地下1階と地下2階にある2つのギャラリーです。同じビルということで、互いに企画がかぶらないことを意識しているように思いました。

京橋界隈

「ギャラリー東京ユマニテ」では、『岡田ムツミ展』という色彩でみせる抽象画の展示をしていました。ドイツで活躍しているそうでしたが、日本の季節や自然をイメージするような穏やか色のグラデーションに魅力があります。

これに対して、「あらかわ画廊」の『斎藤堅司展』では、けして厚塗りではないのですが、ルオーの作品をイメージさせる肖像画の展示をしていました。暖色系が多いようですが同系色の中にアクセント付け個性的な作品に仕上げています。

抽象画と肖像画と異なるものなのですが、おもしろいことに2つの展覧会が関係し合っているような感じがしました。どちらも色で見せることを意識しているようで、偶然なのかもしれませんが効果的に互いをひきたてているようです。どちらのギャラリーも歴史がありそうなので、良い意味で補完ができているのだと思います。

京橋界隈

次に宝町駅の方に向かっていくと協賛しているギャラリーが点在しているのですが、その中でも「SILVER SHELL京橋」でのインスタレーション『隠崎麗菜展』は個性的です。シリコン樹脂を使い編み込んではいないのですが、竹かごよう感じのカラフルな造形の作品が展示されています。

少女の中にある「女」をイメージしているそうですが、なかなか興味深い作品です。あまり大きい作品ではないのですが、インスタレーションをギャラリーでも展示することができる…これはちょっとした発見でした。こうして頑張るギャラリーがあることはとても良いと思います。

京橋界隈

企画される展覧会の中では、グループ展という形をとることも多いようです。グループ展では、個々の個性のぶつかり合いにより、見る側だけでなく創作側にも新たな想像を与えてくれると思います。今回のイベントの中でもグループ展を持ってくるギャラリーがいくつかありました。

「四季彩舎」では、『彩旬会展・華』を企画して藝大出身の4人(金丸悠児、瀧下和之、冨川三和五、山村龍太郎毅望)の作品を展示していました。それぞれ異なる手法を用いて「華」という切り口からアプローチしています。また表現しかたも華を直接描いたり、動物の姿から華をイメージさせたり、脇役として華を演出するなどなかなかおもしろいです。

こうしたチャレンジは、若い人たちの想像に対するパワーから来るものだろうと思います。プロの画家として生きて行くには厳しい現実もあります。しかし、想像や創作は止まることはない。だから、発表の場があれば120%の力を出し切る勢いとなるのだと思います。

京橋界隈

さて、京橋界隈ということで、協賛ギャラリーの中には銀座側に店を構えるところもあります。「ギャラリーゴトウ」もそのひとつです。今回は絵ではなく『冨長敦也展 68億の約束』という石彫の展示を企画していました。片手に収まるような小さい作品ですが、それぞれ石が主張しています。

石彫などの彫刻作品は、いつも見るだけでなかなか触れる機会がないのですが、ギャラリーの方は気軽に触ってみて下さいと声をかけて頂いたのが嬉しかったです。作品は、触ってはじめて判るところもあります。そのことを判っているギャラリーというのは、さすがであると思いました。

イベントのテーマとして「歩いて探すアート」となっているのですが、それが簡単に出来てしまうのがとても楽しいと思います。京橋界隈というイベントは、もう何年も続いているのですが、なかなか出かける機会がありませんでした。今回がはじめての参加となりましたがかなり良い収穫があったと思います。

最近では、六本木を中心に新しいギャラリーが動き出しています。しかし、老舗が集まる京橋も負けてはいないようです。豊富なノウハウに加え、新しい試みを続けていることが効果的に働いていると思います。他の地域と競争をしなから、アートシティ東京を支えて続けてほしいと思います。

※京橋界隈2010(2010年7月9日~2010年7月17日)

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