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自然と人 ~ ネイチャー・センス展2010年08月20日 22時47分47秒

吉岡徳仁(1967-)、篠田太郎(1964-)、栗林隆(1968-)の3人によるインスタレーションです。このところ六本木ヒルズの森美術館では、さまざまな作家による現代アートの紹介を積極的に行っています。今回は、比較的若手の作家を選んで、『ネイチャー・センス』とあるように日頃忘れがちな自然に目を向けています。

ネイチャー・センス

会場内に入ると、いつもならこぢんまりとした展示なのですが、今回はとても広く空間をとっていました。全体を白で統一したところに、正面から薄日の差すような光をあてています。仕切りがされたところには、やはり白い山のようなものがありました。

ネイチャー・センス

突然、ファンの回る音が響くと白い山から雪が舞いはじめました。これは吉岡徳仁の『スノー』という作品でした。真夏の東京で雪が舞う…とても幻想的です。吉岡は、デザイナーとして活躍していて、2007年のニューズウィーク日本版で「世界が尊敬する日本人100人」の一人に選ばれているそうです。

ネイチャー・センス

次の部屋に移動すると、そこにはクリスタルのベンチがありました。透明なのですが表面に少し波が出来ていて、水が湧いているような感じもします。『ウォーターブロック』と作品でした。上からの光がベンチの中を通ることで出来る影もまた波のように揺らめいています。実際に座ってみることが出来ないのは残念ですが、きっと光の層を感じる空間が広がると思います。

篠田太郎の作品は、巨大なスクリーンをつなぎ合わせて表示をするビデオインスタレーションです。『残響』という作品で、それぞれのスクリーンには、異なる日常の風景が映し出されていました。

ネイチャー・センス

日常の中に美をみつけて、自然と人の接し方を考えることを目的しているそうです。確かにどこかでみたよな風景が、スクリーンにあらわれます。ある意味無機質な感じがあり、そこは過去であり未来であるようにも思えます。彼は、スタンリー・キューブリックの『2001年宇宙の旅』のオマージュであると言っているようで、確かに哲学的な感じもしてきます。

『銀河』という作品は、なかなかおもしろい仕掛けをしています。カメラに収めることは難しいのですが、天井から落ちる水滴が水面で波紋を作ります。音もなくサーッと同心円が広がっていく感じで、何か懐かしいような気がしました。

ネイチャー・センス

3人目の栗林隆の作品は、入口からでは何があるのか判りません。紙で作られた天井が、妙に低くところどころ穴が空いています。恐る恐る穴から顔を出すと、そこには白い林が広がっています。地中の動物になったような気分です。

ネイチャー・センス

この作品は、『ヴァルト・アウス・ヴァルト(林による林)』というものでした。低い視点で林を見上げることは、例えば、新宿の高層ビル群を見上げてるような感じにも似ています。白一色であるため、無機質な感覚もどこか似ている不思議な空間です。

そして、その白い林を抜けると土で出来た巨大な山が出現します。『インゼルン』という作品です。頂上までは階段があって登っていけます。頂上は、特撮映画に出てきそうな秘密基地のような感じの作りになっています。

ネイチャー・センス

存在自体がど迫力であり、十分に自然と人の大きさを感じることのできる作品です。この土をどうやってビルの高層階まで運んだのかという、余計なことも考えてしまいがちですが…こうした作品はとても楽しいと思います。

※森美術館(2010年7月24日~2010年11月7日)