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フリー・フォール ~ こんな人、あんな人 - 欧米版画に見る人物表現展2010年09月14日 23時56分01秒

人を描くことに注目をして企画した展覧会ということでした。また、サブタイトルにレンブラントからキキ・スミスまでとあるように幅広い年代から版画を集めていることから、時代による比較や移り変わりを見ることが出来るような展覧会になっています。なお、比較的に現代よりの作品が多い構成になっていました。

こんな人、あんな人

展示は、「さまざまな人物」「自分を描く」「変な人たち」「おもしろい”からだ”」の4部構成です。前半の「さまざまな人物」「自分を描く」には、肖像画と自画像の要素を盛り込んでいて、古い作品ほど職人的な細密さを見ることができます。後半の「変な人たち」「おもしろい”からだ”」は表現方法の広がりを見せるようしていて、かなり抽象的な作品も含まれています。

また、版画の技術的な移り変わりも同時に見て取れるところが、この展覧会の隠されたポイントでもあるように思います。銅版画からリトグラフへの変化、現代作家の表現に拘った技法の選択などは、なかなかおもしろいと思います。版画の役割などと同時に考えるとよりおもしろかったりして勉強になります。

キキ・スミス
キキ・スミス「フリー・フォール、1994」

個性的な作品の中でちょっと気になったのは、アメリカで活躍しているドイツ出身のキキ・スミス(1954-)の『フリー・フォール』です。彼女自身はフェミニストのようですが、女性問題にとどまらず人種差別やエイズなどの社会問題に対しても作品に反映しているようです。

この『フリー・フォール』は、構図的にクリムトの『ダナエ』に似ている感じを受けました。このときは、彼女の経歴などは知りませんでしたし、官能的なことをテーマにする作家であるとの印象でした。もちろん、名前から女性であることが判りました。そして、直感的に自画像であると思いました。どこまでも落ちていく自分自身と向き合う、とてもメッセージ性の強い作品なのでしょう。

小冊子のように小さく折りたたまれている作品のようで、左上のところにその表紙となるものがあります。この普段は、見せないでしまっているという行為が、コンセプチュアルアートに近いような感じを受けました。

この作品の本来の意味は判りませんが、感じたところがだいたいの正解ではないかと思っています。もちろん、彼女の別の作品も気になるところです。かなり過激なところもあるようですが、今後の注目すべき作家の1人にしたいと思います。

※町田市国際版画美術館(2010年7月16日~2010年11月3日)

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