Asagi's Art News





制約を使いこなすこと ~ 第14回 文化庁メディア芸術祭2011年02月07日 00時58分54秒

すでに14回目の開催になるメディア芸術祭です。アートに加えて、漫画、アニメーション、そして、エンターテインメント(ゲーム)の4つの部門から構成されています。エンターテインメント以外については、その芸術性が判りやすくなってきたように思います。

ビエンナーレやトリエンナーレが盛んになり、安定した作品(特にインスタレーション)が増えてきたアート部門、ストーリーや独自性を追求している漫画部門、表現に幅が出てきたアニメーション部門と見所も豊富にあるようです。

メディア芸術祭

しかし、エンターテインメント部門に関して、まだまだ手探りな状態から抜け出せていないような感じがします。展示もビックサイトなどでの見本市のような感じであり、表現の場としての要領を得ていないと思います。

エンターテインメントは、もっとも新しく可能性の高い表現手段であるだけに、選者を含めさらなる工夫が必要だと思います。確かにテレビゲームが主流であることが、制約を生んでいるように感じます。しかし、その制約を使いこなすことが新しい表現を作っていく力になると思うのです。

さて、この新しい表現に挑んだ作品の中で、個人的にベストワンを選ぶならば、クワクボ リョウタ(1971-)の「10番目の感傷(点・線・面)」をあげたいと思います。この作品は、インタラクティブアートと紹介されてるのですが、鉄道模型を使い光と影の効果を見せるインスタレーションです。

簡単には、鉄道模型の列車に光源を設置して、暗闇の中を走らせるもだけです。しかし、途中に置かれた身近なもの(例えば、料理で使うざる、洗濯ばさみ、ボールなど)が、その光源に照らされ影を作り、壁に本当の列車からみる車窓のような光景を見せてくれます。

時間にすれば10分も無いと思いますが、平原を駆け抜け、橋を渡り、トンネルをくぐります。そして、終着駅に向かっていくのです。影の流れゆくスピードや大小に変化させる計算が良くできていていてとっても楽しい作品でした。

メディア芸術祭

会場の風景は残念ながら撮影できませんでしたが、いくつかの作品が六本木の街の中に展示されていました。大賞作品のMichel DÉCOSTERD(1969-)の「Cycloïd-E」は、時間制でデモンストレーションをしているようでした。

また、この他にもいくつか展示があり、六本木アートナイトのように街にアートがあふれる演出は好感が持てます。そして、気がついたのですが、このような展覧会にはたくさんの若い人が集まってきていました。いつもの展覧会とはちょっと違った雰囲気で、これからがまた楽しみなる予感がしています。

メディア芸術祭

メディア芸術祭

※国立新美術館(2011年2月2日~2011年2月13日)