Asagi's Art News





トワイライトゾーン ~ 小谷元彦展 幽体の知覚2011年02月09日 23時25分31秒

ようやく日没の時間が延びてきました。でも、まだまだ夜になるのは早く、夕暮れになると多くの美術館も眠りの準備をはじめます。ただ、六本木ヒルズの森美術館は、他の美術館よりも少し夜更かしをします。

インスタレーションに出会う場合、昼間の明るい時間よりも、夜のあたりが暗くなった時間の方が雰囲気があって好きです。作品を包み込む空気や静寂さが期待を盛り上げていき、作品の世界へと引き込まれていくように思います。

小谷元彦

今宵の小谷元彦(1972-)が造る世界は、まさに夜にピッタリの条件を揃えていると思います。テーマの「幽体」とは、超心理学や心霊研究では肉体と霊体の中間の状態を言います。怪談話などで耳にする「生霊」なども同じ状態です。ちょっと古いですが、トワイライトゾーンを体験にする展覧会になりそうです。

小谷元彦は、東京藝術大学で彫刻を専攻していています。そのため、ベースに彫刻をおきながらも、さまざまなインスタレーションに発展させ作品を発表しているのです。2003年にはヴェネツィア・ビエンナーレに参加するなど、世界的にも注目されている作家なのです。

写真、造形(彫刻)、ビデオインスタレーションなど、やはりさまざまな手法を用いて、「幽体」が存在する生と死の間を表現しています。もちろん、誰もがまだ見たことのない世界です。ただ、いずれは向かう世界なのかもしれませんが…。

さて、気に入った作品ですが、彫刻家であることを感じさせてくれた「Hollow」というシリーズは良かったです。まるでホラー映画に出てくるような血管や筋肉が露出した肉体を持つ人や動物を、白い樹脂を使い実物大に作り込まれています。

造形の印象として怖い感じもするのですが、ひとつひとつの筋肉の躍動感や表情の緻密さには驚きがあります。そして、無地の作品に見る光と影の調和に静かな美しさを見ることが出来ます。ここもまた異次元の世界なのでしょう。

また、「Inferno」というビデオインスタレーションも圧巻です。床と天井を鏡にして、周囲をスクリーンで囲んで滝のような上から下に流れる水の映像を映します。その中に入ると上下の鏡の効果で、空中に存在するような錯覚になります。

その状態に水の映像が加わるのですが、異次元の中に入り込んだような感覚になってきます。叫び声のような効果音もなかなか良くて、幽体を知覚することが出来るように思います。引き返すことが出来ない…そして、この先に何が待っているのか、いずれ判る日が来るのだと思います。

※森美術館(2010年11月27日~2011年2月27日)