Asagi's Art News





山形の記憶 ~ 小池隆英展2011年02月20日 00時00分12秒

大井競馬場の駅に着くと冷たい雨が降っていました。競馬場があることから牧場の匂いがしています。そして、あたりは同じような倉庫が並ぶ簡素な街のたたずまいです。こんな場所にギャラリーを構えるオーナーは、アートを求める者を選んでいるようにも思えてきます。

小池隆英

そのギャラリーは、アキラ・イケダギャラリーと言います。現代抽象画を扱う数少ないギャラリーのひとつです。以前は横須賀の田浦という場所を拠点にしていましたが、今年のはじめに東京に進出することになったようです。

オープニングの展覧会として、小池隆英(1960-)さんの新作の発表が行われました。あさぎにとって小池さんという存在は、絵画教室の先生でもあり、もっと身近に感じている現役のアーティストです。多少他のアーティストとは、想い入れが違うのかもしれませんが…

小池隆英

小池さんの作品は、微妙な色の濃淡で淡くぼんやりとした空間を作り出す独特の世界観があります。霧に包まれ…そこにあるものは、何なのかと想像をかきたてるような不思議な世界です。

小池隆英

小池隆英

ほとんどの作品は、「untitled」のように名前がありません。これは抽象画の作品に多い傾向ですが、題名を付けることでイメージが固定化され、自由な想像を阻害することを防ぐためとも言われています。

もちろん、そのような狙いもあると思うのですが、本当はもっと違うところに狙いがあるのかもしれません。作り手が見る側に問いかけ、見る側が新たな発見をする。そして、その発見が再び作り手に戻り共鳴する…こんなことを狙っているようにも思います。

小池隆英

小池さんは、山形の出身でときどき郷土の話をしてくれます。何もない田舎であると言っていますが、そこにある自然や暮らしている人たちのことをとても愛しているように思います。だから、少年時代を過ごした山形の記憶が作品の中に流れいるように感じたりします。

浮遊感が漂う画面を見つめていると、一瞬ですが連なる山々や優しい風の吹く田園を感じることがあります。これは、少年時代に出会ったたくさんの美しい感動が体に蓄積して、経験を経て熟成した結果から来るものでないかと思います。

※アキラ イケダ ギャラリー(2011年1月8日~2011年2月26日)

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