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精神世界への導き ~ 五百羅漢 増上寺秘蔵の仏画 幕末の絵師 狩野一信2011年06月18日 18時55分41秒

羅漢(阿羅漢)は、仏教において学道を完成して、これ以上に学ぶ要がない聖人のことを言います。そして、中国や日本では、仏法を護持することを誓った16人の弟子を十六羅漢、仏典編集に集まった500人の弟子を五百羅漢として尊敬しているのです。

幕末に生きた狩野一信(1816-1863)は、湧き出す好奇心と新しい絵画表現を取り入れることで五百羅漢図を描きました。しかし、五百羅漢が繰り広げる壮絶な世界観に飲み込まれ、精神的に追い込まれることですべてを完成することは出来ませんでした。

五百羅漢展

展覧会は、東北震災の影響を受けて会期が延期となりましたが、一信の100幅を公開したいと思う関係者の努力もあり、無事に開催することが出来たようです。戦争による東京空爆にも奇跡的に逃れることが出た五百羅漢図の全公開は、ある意味奇跡なのかもしれません。

2幅がペアになり1つの場面を構成しています。左右に配置されることになるのですが、これが作品に空間を与えることになり、より迫力のある見方によっては3D的な効果を作っています。21幅からはじまる六道シリーズは、ダンテの神曲と同じように精神世界への導きを具現化しています。

五百羅漢展
狩野一信「五百羅漢図(第21幅(右)、22幅(左) 六道 地獄、1853-1863」

鮮やかな色彩は、蝋燭など弱い光の中でもはっきりと浮かび上がることを計算していると思われます。また、作品の中には海外(ヨーロッパ)から伝わった陰影法を使ったものなどもあり、五百羅漢図は新たな試みを行うフィールドであったようです。

狩野一信は、五百羅漢図の作成途中で力尽きてしまいますが、本当はこの先の作品のことを考えていたのかもしれません。新しい時代の幕開けを予感して、その扉を少しだけ開いたのかもしれません。

※江戸東京博物館(2011年4月29日~2011年7月3日)