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至福の表情 ~ 第17回 秘蔵の名品 アートコレクション展2011年08月17日 22時26分45秒

今年で17回目となるホテルオークラ恒例の美術は、『文化勲章受賞作家の競演』とのサブタイトルが付いています。毎年、ふだん見ることが出来ない企業所有の作品を目玉にした夏の風物詩であり、とても楽しみな展覧会のひとつです。チャリティーイベントとしても定着していて、今年は東日本大震災の復興にも支援をしています。

アートコレクション

さて、文化勲章ですが辞退者(熊谷守一(1880-1977)など)を出すことありますが、日本国として科学や芸術に特に功績があった者に与える勲章とされています。第32代内閣総理大臣 広田弘毅(1878-1948)により発案された歴史のある勲章と言われています。

したがって、今回は勲章受賞者ということで、生前から一定の評価を得ていた人たちであることから、その時代のトップランナーの作品であると言えるでしょう。もちろん、死後に評価が認められる場合もたくさんあるので、勲章受賞者だけが優れているわけではありませんが、時代を牽引する役割を担った人たちであったことは確かです。

例えば、横山大観(1868-1958)や川合玉堂(1873-1957)などは押し寄せる西洋文化の中で新しい日本画を模索しました。岡田三郎助(1869-1939)や藤島武二(1867-1943)などは、新しい洋画というジャンルの先駆者として苦労をしています。なお、近年では加山又造(1927-2004)や平山郁夫(1930-2009)などが受賞していますが、比較すると受賞者は日本画家の方がやや多い感じを受けます。

展覧会の作品ですが、やはり企業に納める作品になることから、どこに飾っても見栄えのする落ち着いたものが多いようです。個性的な作品よりも売れる作品と言うことになると思うのですが、だからと言って何処にでもあるようなものではありません。しっかりと主張するところは声を大きく、彼らにしか作れない世界を見せるところが、やはりトップランナーの作品なのだと思います。

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小磯良平「集い、1977」

今回のその中でもいちばん良かったのが、小磯良平(1903-1988)の『集い』です。小磯は、肖像画の中でも群像を得意とする画家です。この『集い』も男女7人が入り混じる構成で、かつ、立ちポースや着座ポースを組み合わせた難しいものです。これ程の人数を画面に配置すると、まとまりが無くなってしまいそうなのですが、互いの関係が協調して不思議なハーモニーがあるのです。

ところどころに楽器が見えることから、小さな演奏会が一区切りついた和やかな時間のようです。演奏がどうであったか、次の曲をどうするかなどの話し声が画面から自然に聞こえてきます。顔の表情などは省略されているのですが、それでも個々の人たちの至福の表情を感じることが出来るのは、優れた絵画マジックなのだと思います。

※ホテルオークラ東京(2011年8月6日~2011年8月28日)

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