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美しいとは? ~ 藤島武二・岡田三郎助展 女性美の競演2011年08月19日 10時40分30秒

藤島武二(1867-1943)と岡田三郎助(1869-1939)は、日本近代洋画の父と呼ばれる黒田清輝(1866~1924)を介して、ヨーロッパ留学、東京美術学校(現・東京藝術大学)の教授就任など同じように道を歩み競い合いました。

藤島武二・岡田三郎助展

藤島は、薩摩藩出身で当初は四条派の川端玉章(1842-1913)に日本画を学んでいましたが、24歳で洋画に転身します。黒田に影響されアカデミックな写実技法から印象派に到るまでの当時の最先端のモードをヨーロッパで吸収してきます。人物描写に関しては、西洋、東洋という観念を排除するようなダイナミックな傾向を見せています。

また、岡田は、佐賀藩出身で洋画の曽山幸彦(1859-1892)の画塾に入門が画家のスタートとなります。藤島と同じく黒田に影響されますが、日本人女性の美に強く惹かれることなります。また、色彩の扱いについて優れた感性をはっきして、黒田にも一目置かれる存在になります。

彼らの女性美は対照的で藤島の描く女性は凛々しい強さを持っているのに対して、岡田の描く女性はしなやかさと妖艶さを持っています。どちらの女性も明治という新しい時代を生き抜いていく強かさを秘めていることは共通しています。

今回の展覧会でどちらの女性を選ぶかという点にも注目したいと思っていました。それぞれの主張する女性美は、やはり奥が深いのです。だいぶ迷ったのですが、今回は岡田の『あやめの衣』をお気に入りに選びました。

藤島武二・岡田三郎助展
岡田三郎助「あやめの衣、1927」

この作品は、顔が描かれていないところが、何と言えずミステリアスですてきです。また、透き通るような背中の白さとあやめの衣の青のコントラストに加え、隠れている女性のプロポーションを想像するととても妖しくセクシーです。

女優ならば顔が命など言って、美しい容姿を求める傾向にあります。しかし、『あやめの衣』では、あえて重要とされる顔を隠して見るものの想像にゆだねます。「美しいとは?」と画家が問いかけているようです。答えの出ない哲学のようで、なかなか難しい永遠の問題だと思います。

※そごう美術館(2011年7月28日~2011年9月4日)

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