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ベネッセアートサイト直島(豊島美術館&精錬所)2011年09月17日 20時30分42秒

ベネッセアートサイト直島の美術館は、直島より北にある豊島(てしま)と犬島にも存在します。直島よりはアクセスが不便ですが、それぞれに魅力的な美術館や作品が配置されています。まずは、直島から20分ほどの豊島に向かうことにしまいた。

豊島には、体験型の美術館である豊島美術館があます。フェリーで唐櫃港で行き、そこから小さいバスで少し高台になっている美術館まで移動します。直島に比べるとさらにのどかな光景が広がっています。

直島

美術館の周りは畑になっていて、海風と動物たちの鳴き声が微かに聞こえてきました。豊島美術館は、西沢立衛(1966-)と内藤礼(1961-)が手掛けた作品です。西沢は、金沢21世紀美術館の設計で有名なSANNAの代表であり、国内外から注目を集める建築家です。また、内藤は、光や水、空気などを作品に取り入れるインスタレーションを得意とする彫刻家です。

直島

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インスタレーション的なアプローチで、まずは自然の中の小路を歩き抜けます。そして、水滴形のドームに入ると、2つの開口部からは風が吹き抜け、床から無数の水がわき出るさまを体で感じるのです。

作品はこれだけです。話だけでは状況はわかりづらいのですが、コンクリートの広い空間に風、光、音など、個々の要素が感覚として静か体に入り込んでくる感じがします。静かな夢の中にいるようにも感じられ、時間の流れが止まっていくようにも思えるのです。

そして、ベネッセアートサイト直島の最後は犬島です。最北端の島であることから、対岸に岡山県を望むことができます。かつては花崗岩の採掘場として知られ、銅精錬所跡や採石場跡が残っていて、最近では、テレビドラマのロケ地としても利用されていたようです。

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そして、この銅精錬所跡が犬島アートプロジェクト「精錬所」により美術館として蘇ることになり、いままでにない雰囲気の空間展示を実現しているのです。廃墟がテーマの作品にときどき出会うことがありますが、まさに打って付けの場所が犬島なのです。

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「精錬所」への入場は、時間制で区切れています。これは、作品の鑑賞方法が決まっていることと、ガイドを付けるために人数制限をしているためであると思います。たしかに、内部は昔の精錬所であり、照明も自然光にしてるため、しかたのない措置であると思います。

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作品は、近代化産業遺産としてのこる犬島の姿、美術館内部にあるインスタレーション、自然を利用した建築と美術館に取り入れられた環境システムから構成されています。なお、インスタレーションは、ウルトラ人形が可愛い「バンザイコーナー」を発表している柳幸典(1959-)が担当して、美術館の設計は東京理科大出身の三分一博志(1968-)が担当しています。

精錬所に入るとはじめに美術館内部のインスタレーションから案内されます。照明と空調は精錬所として使われていた頃と同じように、電気を使用することなく自然のエネルギー循環で行われているそうです。そのためか、視覚だけでなく聴覚、触覚、臭覚までもが刺激されることになるのです。

個々のインスタレーションも良くできているのですが、どちらかと言うと美術館自体のインパクトの方が強いため、内部の作品を含め美術館自体がひとつの生き物のような感じがしていきます。美術館が呼吸をしながら、来るものを見ている…そんな感じがするのです。

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美術館内部は1回きりの鑑賞となってしまいますが、周りの近代化産業遺産については好きなだけ見ることができます。かつての施設を周回する小路があり、高低差か少しあるのですがシンボルである煙突、発電所跡、貯水池など探検隊の気分を味わうことができるのです。

いろいろな意味から古いものと新しいものが混在する空間になっています。それは、時間を超えるタイムマシンのような存在であるかのようです。東北の大震災以降に考えるようになったエネルギー問題…そのヒントがこの島にあるのかもしれません。

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※ベネッセアートサイト直島