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「絵を描くには勇気がいる」 ~ 猪熊弦一郎展 いのくまさん2012年08月12日 00時03分33秒

東京オペラシティでの『いのくまさん』(2010)を見逃していたので、ちょっと楽しみしていました。また、作品を貸し出している香川県の丸亀市猪熊弦一郎現代美術館も、多くのメディアに取り上げられるようになるなど話題になっているもが嬉しいです。

いのくまさん

猪熊弦一郎(1902-1993)は、高松の人です。 東京美術学校(現東京芸術大学)洋画科に入学すると藤島武二(1867-1943)から指導を受けていたようです。まもなく帝展にも入選する実力を備えてフランスに留学、アンリ・マティス(1869-1954)を訪ねます。

しかし、第二次大戦が勃発して帰国となり、戦後は絵画以外にもデザインなども手がけいます。1955年にニューヨークに拠点を移し、マーク・ロスコ(1903-1970)、イサム・ノグチ(1904-1988)、ジャスパー・ジョーンズ(1930-)などとも交流を持ったそうです。

幅広い絵画手法や表現方法を身につけて、新しい表現の作品を制作していきますが、最愛の文子さんをなくした後は『顔』という作品のような自身の悲しみを形にするものに変わっていきます。

展覧会には、その顔シリーズもやって来ています。もちろん、その顔が文子さんであるのは判るのですが、さまざまな表情は彼の身につけて表現の集大成であるように思えるのです。悲しい気持ちや寂しい気持ちも伝わってきますが、画家として性のようなものも感じることができます。

いのくまさん
猪熊弦一郎「顔80、1989」

彼は良く「絵を描くには勇気がいる」と言っていたそうです。画家にとって、自身の画風を変えるにはとても勇気が必要です。特に一定の評価を得てしまった画家には深刻な問題だと思います。しかし、新しい表現に出会った時、挑戦したい気持ちもまた画家なのだと思います。ひとつの答えを見せてくれる…それが、『いのくまさん』なのだと思います。

※そごう美術館(2012年7月26日~2012年9月9日)

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