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赤い積みわら ~ シャルダン展 静寂の巨匠2012年10月14日 17時29分32秒

ロココ時代の画家であるジャン・シメオン・シャルダン(1699-1779)は、時代の優雅で享受的な画風とは異なり、オランダの風俗画に影響を受け穏やかなで慎ましい人々の生活や静物を主題としていたようです。その作品は、歴史画の権威を振るう時代でも高く評価されていました。

シャルダン

ところが、シャルダンの作品は、フェルメール(1632-1675)の作品と同じように芸術アカデミーなどの風俗画に対する軽視の姿勢から歴史に埋もれてしまいます。そして、19世紀になり批評家のトレ=ビュルガー(1807-1869)らが、再評価を行うことで再び光を取り戻すのです。

日本でのシャルダンの作品は、フェルメールの作品のように広く知られてはいませんが、フランスではとても人気のある画家であると聞いています。あさぎも名前は知っていましたが、作品の知識はほとんどありませんでした。

展覧会は、初期の静物画からはじまります。残念ながら芸術アカデミーの正会員となるきっかけになった『赤エイ』はありませんが、食材や調理器具を描いた作品はいくつか来ています。

風俗画は、デッサンや習作をまじえて展示することで、その作成の過程などを推測出来るようになっています。また、当時流行っていた対となる作品の展示もいくつか試みていて、モティーフや画面構成、色彩などの違いを楽しむことが出来ます。

さて、この展覧会で印象に残った作品は、やはり展覧会のポスターにもなっていた『木いちごの籠』です。キッチンの机の上に山盛りなった木いちごの赤色の鮮やかさに驚かされる感じです。そして、想像してしまいました・・・

シャルダン
ジャン・シメオン・シャルダン「木いちごの籠、1760」

描かれているものは異なりますが、その安定した三角形は、モネ(1840-1926)の「積みわら」の原形であるようには思えてきました。これは「赤い積みわら」なのです。きっと、モネもこの絵を見たに違いないと思うと、美しい光景が長い時間をかけて伝承されていくロマンを感じます。

※三菱一号館美術館(2012年9月8日~2013年1月6日)

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