Asagi's Art News





北欧の豊かな時間 リサ・ラーソン展2014年09月17日 23時05分02秒

胴長ネコのマイキーが人気者です。彼を世に送り出したのが北欧の陶芸デザイナーとして活躍しているリサ・ラーソンさん(1931-)です。会期はとても短いのが残念ですが、彼女の仕事とデザインの源を知ることが出来るのは楽しい展覧会です。最新のマイキーグッズも販売しています。

リサ・ラーソン

特設カフェでいただいたマイキーのラテです。頑張って作ってもらいましたが、ちょっとぬるいの残念でした・・・。

リサ・ラーソン

※松屋銀座(2014年9月11日~2014年9月23日)

ギャップ ~ 理想の暮らしを求めて 濱田庄司スタイル展2011年09月04日 21時34分39秒

陶磁器の良し悪しの判断は、なかなか難しいものがあります。何度となく陶磁器の展覧会を訪れますが、いまだに迷うものです。絵画と同じように感性で捕らえようとしてみるのですが、何かが邪魔をしているのかもしれません。

日本には、たくさんの窯があり昔から名品と呼ばれるものが残っています。輸出品としても高く評価され、ヨーロッパをはじめとする海外で大切にされています。しかし、それらは美しい装飾をほどこした高価な作品が大半を占めるのです。

濱田庄司

ところが、濱田庄司(1894-1978)は、そのような華やかな陶磁器とは異なり、益子焼きと呼ばれる素朴でいてスタイリッシュな作品を広め活躍した人です。英国人陶芸家のバーナード・リーチ(1887-1979)や民芸運動の柳宗悦(1889-1961)などとの交流から影響を受けたとも言われています。

何だか田舎の古くさい人物のように思えたのですが、展覧会によるかなりモダンな感じでお洒落であったことが判りました。生活もいまで言うオーガニックという言葉がピッタリだと思います。もちろん、作品も良く見ると抽象画のような人の想像をくすぐるような斬新なものであったりと、想像とのギャップに気づく良い機会になりました。

まだまだ陶磁器の世界は奥が深そうであり、何だかおもしろそうな人たちがたくさんいるような感じがします。絵画と違い生活と直接的に関わりあっているものでもあり、工業製品は大量に氾濫しています。しかし、本当の作品から発せられるメッセージはあるはずです。そのメッセージに早く気がつくように、これからもたくさんの作品に出会いたいと思います。

※パナソニック電工 汐留ミュージアム(2011年7月16日~2011年9月25日)

至高の技術美 ~ 誇り高きデザイン 鍋島2010年09月17日 23時05分01秒

先日、ハンス・コパーの展覧会に行ったこともあり、苦手な陶芸ですがさらにチャレンジしてみようと思い「鍋島」なる日本の伝統的な陶芸に出かけることにしました。「鍋島」は、江戸時代に佐賀藩から将軍に献上するものとして、高い技術を持って作成された磁器のことでした。

鍋島

古くは中国の宋時代の景徳鎮からの流れを受け継ぐ磁器であり、伊万里焼(有田焼)とも近い関係にあるとのことです。「色鍋島」といわれる色絵が知られるところで、色絵には赤、黄、緑の3色のみを用いることが原則とのことです。青を基調とした「青磁」との組み合わせも多く、デザインには幾何学的な紋様、植物、野菜、器物、風景などさまざまでものがあるようです。

展覧会では、「鍋島」の代表となる尺皿(直径1尺の円形皿)が数多く展示されていました。もちろん、小さい皿などの展示もありましたが、尺皿は大きさが均一であるためか、画家のキャンバスのような感じであり、さまざまなデザインが巧みに描き込まれていました。本当にいまでも古さを感じさせないデザインには驚きを感じます。

そして。透き通るような色彩がさらに洗練されたデザインを引き立てていて、技術の高さと美に対する感覚の鋭さを感じることが出来ます。伝統であるが故に中国の磁器を超えたいとの想いがあったと思います。ただし、デザインや技術そのものを変えることはなかったと思いました。陶芸とは何かとの追求ではなく、あくまでも至高の技術美を目指していったのだと思います。

※サントリー美術館(2010年8月11日~2010年10月11日)

美の不変性 ~ ハンス・コパー展-20世紀陶芸の革新2010年09月04日 00時37分23秒

陶芸(焼きもの)の作品に対しては少し苦手感があって、あまり見に行く機会がありません。整然と置かれた作品を見つめるだけでは、どうも上手く感じが読み取れないことが原因なのだと思います。確かに、陶芸は遠くから眺めても美しいと思いますが、本来は手に持って触って楽しむものだと思っています。

だから、大事に飾られガラスケースに収まった作品を見るのには多少違和感を感じるのです。しかし、ハンス・コパー(1920-1981)の作品は、見るだけでも何か伝わってくるような感じがしました。既に会期が迫ってきていて、駆け込みで出かけることが出来ました。

ハンス・コパー展

本当は早い時期から展覧会を気にしていたのですが、陶芸ということで引いていたのだと思います。たまたま日曜美術館でハンス・コパーの特集を見たことが、会いに行くきっかけになりました。あり得ないような形の器は、とてもインパクトがありました。そして、彼の人生もまた数奇であり魅力があるのです。

パナソニック電工汐留ミュージアムと企業名が変わったことで、名前も変わってしまった美術館には、やはり日曜美術館を見たと思われる人たちが集まっていました。いつも静かな美術館ですが、テレビの影響はすごいものだと思います。

日曜美術館を見ただけの知識ですが、ハンスはドイツに生まれ、ちょうど第二次大戦と歩調を合わせるかのように成長しました。そして、社会の旅立つ直前に父親の自殺、家族の離散、祖国からの逃避行とめまぐるしい人生の波にのまれます。イギリスに渡った後も敵国人として扱いを受け、収容所にも送られひどく心に傷を作ることになります。

これも必然だったのだと思いますが、戦争も終わり仕事を求めた彼は、陶芸家のルーシー・リー(1902-1995)と出会うのです。繊細で器用な彼はルーシーから陶芸を習いはじめるのですが、とても飲み込みが早く才能もありました。いつの間にかルーシーの良きパートナーに成長して、ルーシーのバックアップもあって独自の作品も手がけるようになりました。

展覧会は、彼が作品を発表しはじめた頃のものから、独立して20世紀陶芸の代表作を送り出す晩年までをゆっくりと展開させています。ルーシーのボタンやティーセットなどルーシーの世界を忠実に再現しています。また、ハンスが独自に作りはじめる同じ形を合わせる技術を使ったシンメトリーな作品は、時が経つと共に進化していきます。

陶芸が戦争で受けた傷を徐々に癒していったのだと思います。そして、作品の中にかつて失ってしまったものを刻みこんでいるように思います。シンメトリーの調和と人を思わせるようなスタイル、釉薬(ゆうやく)や焼き方の研究など精神と技術が融合して行くようです。

やがて、作品は古代のキクラデス彫刻を影響を受けはじめます。最新の陶芸は、少しずつ古代に近づいていく、とても不思議な感じがします。美の不変性を作品として表し証明しているのかもしれません。それは、人生とは何なのか? 人の出会いとは何なのか? と言う哲学的な問いかけを自分自身に課していて、まじめにコツコツとその答えを探っているかのようです。

※パナソニック電工汐留ミュージアム(2010年6月26日~2010年9月5日)