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宇宙においてもっと偉大なもの ~ アメリカ抽象絵画の巨匠 バーネット・ニューマン2010年12月12日 23時50分14秒

マーク・ロスコ(1903-1970)と共に抽象画の巨匠であるバーネット・ニューマン(1905-1970)の『アンナの光』を所蔵しているのが、千葉の佐倉にある川村記念美術館です。巨大な抽象画のコレクションだけでなく常設もしている川村記念美術館ですが、今回は国内初になるニューマンの個展を開催しました。

バーネット・ニューマン

ニューマンは、アメリカのニューヨークに生まれ大学では哲学を専攻します。父の洋服屋を手伝いながら画家としてスタートします。初期の作品では表現主義で作品を作成しているようでしたが、抽象主義に移行した段階で、まとめて作品を処分したとのことです。

シュルレアリスムにも挑戦しますが、やはり合わず徐々に抽象主義に変化していきます。しかし、抽象主義にあっても幾何学的な構成や何を描いてあるか判るような表現は好まず、少ない色数で面を塗っていくカラーフィールドペインティングに落ち着くことになります。

彼の作品の特徴は、色面に細いジップ(縦線)で区切る手法を用いるものです。ジップは、平面の世界だけでなく立体(彫刻)の世界まで広がります。彼自身は、水平に広がるのではなく垂直に広がることが重要であると語っています。

さて、展覧会では、『アンナの光』を中心に小さい連作、中規模の作品、そして、ジップの最終形である彫刻の展示もあります。作品数こそ少ないですが、彼の導き出した絵画の哲学を感じることが出来ます。

バーネット・ニューマン
バーネット・ニューマン「アンナの光、1968」

普段は自然光の入るニューマンの部屋にある『アンナの光』ですが、彼の作品が並ぶ中に表れるといつもとちょっと違った感じがするのが不思議です。幅7.1m、高さ2.3mの彼の作品中最大の大きさを誇ります。

作品の題名にあるアンナとは、彼の亡き母の名前です。この宇宙においてもっと偉大なものが、彼の母だったのかもしれません。赤色は光の中では最も波長の長い色です。安らぎや暖かさを感じる色なのです。ニューマンは、ルネッサンスも印象主義も否定していません。ただ、問題は何を描くかであると言っているのです。

※川村記念美術館(2010年9月4日~2010年12月12日)

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