Asagi's Art News





美しいおっぱい ~ いのちの乳房2011年01月10日 10時02分25秒

笑顔に目が奪われるヌード写真集が、本屋さん(紀伊国屋書店)に並べられていました。『いのちの乳房』という写真集です。この写真はもしかしてと思い確認すると、やっぱりアラーキーこと荒木経惟(1940-)の撮った写真でした。

なぜ、彼女たちの笑顔は輝いているのか? その秘密は、彼女たちのおっぱいにありました。日本女性の乳がんは、約30人にひとりの割合で見つかります(男性にも見つかりますが、女性に比べると数は少ない)。もちろん、検査も進歩してきていますが、命を失うケースも多いとても怖い病気です。

命が助かったとしても、肉体的、精神的に苦痛をともなうことがあります。特に乳房の切除に至った場合の精神的な痛みは、はかりしれない苦痛となります。第三者は、命に比べればと思いがちですが、おっぱいひとつで生きて行くことさえ苦痛になるのです。

この写真集は、そうした多くの女性に向け「乳房再建手術」を提案するとともに、生きることの大切さを示しているように思います。そこには、グラビア写真集に出てくるようなきれいなおっぱいはありません。しかし、その人の誇りと新しい人生を見つけることができるのです。そこにあるのは、美しいおっぱいです。

かつて岡村太郎(1911-1996)は、こんなこと言っていました。きれいな人は、ただきれいだなと思うだけで、気にとめることはない。しかし、きれいではないが、何か惹きつけられる人がいる。そのひとがすばらしい人なら、つきあっているうちにだんだん美しさが輝いてくるような感じがして、やがて本当にきれいであるような気になってくる。そんな人は、美しい。

この本は、そんな人たちがモデルの写真集なのです。そして、モデルである彼女たちが、選んだ写真家がアラーキーだったのも何故か納得がいくように思います。アラーキーは、猥雑なイメージの作品も多く手掛けていますが、最愛の人を亡くすなど死や絶望を経験していて、とても暖かで愛情のある作品も撮っています。

死や絶望を見つめ、新たに生きる希望を見つける。どん底から這い上がってくるのも、また人生なのかもしれません。モデルたちが写真家を呼び寄せ共鳴しています。希望は笑顔であり、誇りは新しい体なのです。

※「いのちの乳房」オフィシャルサイト