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完全美 ~ 大英博物館 古代ギリシャ展 THE BODY 究極の身体、完全なる美2011年07月19日 20時10分21秒

古代ギリシャと言っても約3000年間の長い歴史があります。しかし、ギリシャの美術としてなじみがあるものは、比較的新しいアルカイック時代(前600‒前480年)、クラシック時代(前480‒前323年)、ヘレニズム時代(前323‒前31年)、ローマ時代(前31年以降)に作られた彫刻や陶器などになると思います。

古代ギリシャ展

今回の展覧会は、本当に古い時代のものからオリンピックなどの文化的に開花した時代までを網羅する貴重なものとなっています。約5000年もの時の流れに耐えた素朴な女性像から完全美の円盤投げ(ディスコポロス)まで、これぞギリシャ文明と期待が高まります。

ギリシャ美術の変遷を確認することも楽しいのですが、今回はどうしても円盤投げ(ディスコポロス)が気になってしまいます。人としての最も美しいフォルムと近代オリンピックに受け継がれる筋肉の躍動感は、魅力がありすぎると言って良いと思います。

新聞などの記事によると作られたのはローマ時代の紀元前5世紀半頃、ギリシャの彫刻家ミュロンによるものと伝えられています。そして、この円盤投げ(ディスコポロス)には、オリジナルがあったことからローマンコピーと呼ばれているようです。つまりローマ時代の複製品であるのですが、すでに2000年もの月日が過ぎていることからオリジナルと同様に貴重な作品なのです。

古代ギリシャ展
ミュロン「円盤投げ(ディスコポロス)、紀元前5世紀半頃」

研究者によると円盤投げ(ディスコポロス)のポーズは、実際の競技には適さないと指摘があるそうです。実際の競技から写したポーズではないとすると、作者が意図的に美を追究したものであると考えるのが自然です。筋肉が躍動する最も美しい形を探り、円盤を持ち弓のようにしなる体こそ完全美であるとの結論なのだと思います。

円盤投げ(ディスコポロス)の展示は、作品を囲むようにして360度どの位置からも見ることができるものです。例の阿修羅展の展示方法と同様の方式を採用しています。多少見上げる形になりますが、角度による微妙な変化を追うことが出来ます。見る人によりベストポジションが異なると思いますが、どこから見ても美しい作品でいろいろな意味で人間はすごいと思ってしまいます。

※国立西洋美術館(2011年7月5日~2011年9月25日)