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パーフェクト ~ 運慶 -中世密教と鎌倉幕府-2011年02月14日 00時43分45秒

数年前のクリスティーズのオークションで話題になった運慶(生年不詳-1224)の大日如来像。この仏像も公開されると聞いて、金沢文庫まで足を伸ばしました。金沢文庫の名前は、駅名にもなっていて知っていたのですが、なかなか訪れる機会がなくはじめの訪問となりました。

金沢文庫は、鎌倉時代に北条実時(さねとき)が別荘としていた場所に称名寺を建てて、金沢氏に関する典籍や記録文書を集めたのがはじまりと言われています。歴史的に何度も再建をされていて、現在の金沢文庫は、1930年に神奈川県が文化施設として復興したものが元になり、1990年に歴史博物館として活動しています。

運慶

そんな金沢文庫において、これまた鎌倉時代の名仏師である運慶の展覧会が行われるのも何かの縁なのでしょう。さて、運慶の作る仏像は、平安後期からの女性的で豊満穏やかな表情でのっぺりとしたフォルムとは異なり、男性的で量感のある表情と変化のある力強いフォルムが特徴となります。

作品の中でも、密教の中心となる大日如来像は、悟りを開いた聡明な表情に加え、運慶が得意とする力強く見るものを圧倒する肉体美に目が引かれます。展覧会では、ポスターにも使用されている奈良・円成寺の大日如来像(1176)が、大きさや状態などを含めてとても美しいと思いました。

現存する運慶の仏像の中では、最も古い作品であり、この後の奈良・興福寺復興や奈良・東大寺での活躍の起点となったようにも思える作品と言えます。金箔はかなりはげていますが、そのことが逆に風格をかもし出しています。ずっしりと安心感を与える三角形の構成が、仏の功徳を広く伝えています。仏教のことを知らない人でも、伝えようとすることが何であるか感じることが出来るのです。

秘仏として、大事に扱われてきたこともあり、鎌倉時代の作品とは思えないような色鮮やかな仏像には、たいへん驚きがあります。例えば、神奈川・称名寺光明院の大威徳明王像(1216)などは、朱や藍などの当時使用されている顔料が鮮やかに残っていて、本当に1000年もの歳月が経っているのかと思わせるすばらしい作品です。

もちらん、話題の東京・真如苑の大日如来像もコンパクトでパーフェクトな状態で、異論はいろいろあると思いますが、個人的には本当に良い買い物をしたと思います。この他にも不動明王や毘沙門天など、数少ない運慶の作品をよくここまで集めたと思わせるなかなかの展覧会であったと思います。

※神奈川県立金沢文庫(2011年1月21日~2011年3月6日)