Asagi's Art News





皮肉 ~ 星の王子さま展2007年05月01日 12時24分55秒

先月の新聞に「星の王子さま原画、日本にも」と紹介されていました。山梨で絵本ミュージアム清里を主催する人が、東京で開かれた古本市で見つけたととのことでした。サンテグジュペリの原画は、47点のうち多くが行方不明で、確認されているの今回のものを含め6点だけだそうです。

星の王子さま展

今回の銀座松屋の展覧会では、発見された原画の展示がメインとなるのだなと思いました。しかし、そこはデパートということもあり、「星の王子さま」をテーマにいろいろ見せる努力をしていました。パネルセッションが多かったのですが、ところどころ模型やインスタレーションなども混ぜていました。

どうしても「星の王子さま」に書かれている内容を意識してしまうので、展示にも文章が多くなり全体としてくどい感じがします。大人には良いですが、子供には辛いかもしれません。どちらを意識しているのか迷う展示なのかもしれません。

注目の原画は、最後から2番目の部屋にありました。周りをサンテグジュペリのメモやスケッチで囲み、部屋の中央に初版の挿絵とともに展示していました。原画は、王子さまが4番目に訪れる星に住む「実業屋」です。なんとなく水彩でさらさらという感じ描いたようにも思えました。大きさはA4程度です。

実業家
サンテグジュペリ「星の王子さま、1943」

ところが、この原画は、かなり描き直しを行ない完成したものらしいのです。それぞれの場面に比喩を盛り込むため、それに見合う風貌や景色にするのは、いろいろたいへんだったと思います。インクの線は細く心細さを、余白を用いることで空虚な感じを演出しているのかとも思えます。

しかし、日本で見つかった原画が「実業家」というのも皮肉です。無数にある星の所有権を数える実業家は、プチバブルにおどる日本人のようにも思えます。世の中、巡り会わせというものは、不思議な縁をたどるようです。

※星の王子さま展