Asagi's Art News





富士山が教えるもの ~ 北斎展2005年11月06日 19時39分44秒

印象派の画家達は、浮世絵をこよなく愛してくれました。そして、浮世絵は、彼らの作品に多くの影響を与えた日本の誇るべき文化であると言えます。その巨匠である葛飾北斎の一生を綴る展覧会が上野で開かれています。その展示数は、500点を越える今までにない大規模なものです。海外に流出した作品もここぞとばかりに凱旋しますので、とても楽しみにしていました。

北斎展

やはりというか、大盛況でゆっくり見ることは難しかったのですが、頑張って鑑賞しました。北斎の人生をたどるように、絵師として活動をはじめた春朗(しゅんろう)期、作品に幅が出てきた宗理(そうり)期、悩ましい美人画の葛飾北斎期、北斎漫画など絵手本を手がけた戴斗(たいと)期、冨嶽三十六景はじめとする代表作を生み出した為一(いいつ)期、晩年の肉筆画に移っていった画狂老人卍期の順に作品が展示されます。

歳を重ねるごとに変化して行くの作品も楽しいのですが、注目はどうしても冨嶽三十六景ということになります。オリジナルの美しい作品は、もはや海外にしかないという状況は、少し寂しい気もしますが、世界でも大切にされていることを思うとなんとなく嬉しくなるのが複雑な心境です。「山下白雨」「凱風快晴」「神奈川沖浪裏」これがベスト3となりますが、あさぎは、やっぱり「神奈川沖浪裏」です。前期後期で入れ替えがあるそうですが、このときはニューヨーク・メトロポリタン美術館のものでした。

冨嶽三十六景
葛飾北斎「冨嶽三十六景神奈川沖浪裏」

北斎の構図の凄さが、この作品の中に凝縮されているようで感動的です。左側の大波から伝わる躍動感に目を奪われるとすぐに白い波しぶきの繊細に気づかせる巧みさがあり、右側に目を移すと大波に立ち向かう船とその乗組員が必死が見るものをハラハラさせます。そして中央に雪化粧の富士山が、控えめでありながらも存在感を主張して、まるで人に試練を与える神のような姿を見せてるところは、酸いも甘いも知った北斎の人生感なのでしょうか。日本人に生まれて良かったと思う至福な時間でした。

※東京国立博物館