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奉納 ~ 小泉淳作展2010年10月20日 22時00分12秒

横浜西口の賑わいは横浜一なのですが、大規模な再開発が出来ずにいる古い地域です。百貨店も東口のそごうに対して老舗の高島屋となるのですが、やはり老朽化は目立ってきています。もちろん、高島屋にも展覧会をするスペースがあります。しかし、なかなか企画展を開く機会がないようです。

今回は、先に日本橋高島屋で開催された「小泉淳作展」が巡回となり展覧会が開かれました。「平城遷都1300年光明皇后1250年御遠忌東大寺本坊襖絵完成記念」なる長いサブタイトルがついていて、完成したばかりの奈良東大寺本坊の障壁画を見ることが出来ます。

小泉淳作(1924-)は、京都に行ったおり建仁寺で見た双竜の天井画を描いた日本画家です。鎌倉出身で特定の画壇に属さない重鎮です。50歳を過ぎた頃から注目を集めた遅咲きの画家ですが、繊細な筆使いで緻密な描写を得意としています。植物、特に野菜などは、独特の存在感に魅力があります。

展覧会では、その50歳頃の作品から紹介していて、障壁画は狭いスペースですが、東大寺本坊の内部を再現するよう組み立てられていました。庭に面して配置される障壁画には、蓮池の様子が写しとれています。花や葉のひとつひとつが細かい表情で描き分けられていて、全体を見渡すと大きな池を彷彿させるとてもバランスの良い作品です。

小泉淳作
小泉淳作「蓮池(部分)、2010」

その奥の部屋には、小泉が生涯ではじめて描いたという吉野の桜が隠れています。とても細かい桜の花びらが一面に描き込まれていて、本人も修行するような想いで乗り越えたといっていました。何故いままで桜を描かなかったか、その理由を「桜を描けば売れるので、そのような題材を描くことに抵抗があった」と述べています。

…ちょっとへそ曲がりで、おもしろい人物に魅力を感じます。歴史を振り返えると、神社仏閣に奉納できる作品を描くことが出来るのものは、本当に限られたものだけです。絵が上手いだけでは、成し遂げらることが出来ない、何かを必要とするのだと思います。神仏をもうならせる確かな志が必要ということなのです。

※横浜高島屋(2010年10月14日~2010年10月25日)

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