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人が挑み続ける ~ 鉄を叩く - 多和圭三展2010年11月21日 23時43分55秒

鉄の固まりはビクともしません。しかし、人は、鉄に向かい叩き続けます。そして、鉄は、叩かれた力を人に跳ね返し、この繰り返しが続きます。この人と鉄との対話が終わったとき、多和圭三(1952-)の作品が生まれるのです。

何百キロもある鉄の固まりは、叩かれることで表面にたくさんの凹凸ができ、少しずつ形を変えていきます。しかし、人が変えることが出来るのは、鉄にとってはほんのわずかな部分に過ぎません。

多和圭三展

多和圭三は、日大芸術学部で彫刻を学んでいます。その後、一貫して鉄と向かい合いながら作品を作り続けています。無骨と言うべき作品は、他の彫刻家にない制作スタイルと彼の持つ自然観にあるようです。なお、現在は、大学教授として多摩美大で後進の指導にも力を注いでいるとのことです。

さて、展覧会ですが、目黒区美術館のスペースを有効に使用して展示がされています。1階には、やや小さめの作品やスケッチ、作成紹介のビデオなども配置して、多和の世界感の入口を示しています。

2階には、野外展示で良いような大きめの作品を配置し、作品の世界を掘り下げるために床のマットを剥がしコンクリートを露出させるなど、見せる側の意気込みと工夫が表れています。

「自然そのままの木や石に手を加える勇気はないが、自然の鉄鉱石から人工化された鉄なら、少しは自分も手を入れることができる。(毎日jpのインタビュー記事より)」、これが彼の鉄に対する想いであり、制作の原点なのでしょう。

自然の大いなる力に対して、人が挑み続ける…ある種の空しさを感じるのですが、人が生きていく情熱をじわじわと感じることが出来ます。また、叩かれた鉄の表面は、鈍く光り伝説の生き物の肌のように滑らかです。無機質の鉄に生命が宿った神秘の扉を開いてしまったかのようです。

※目黒区美術館(2010年11月13日~2011年1月9日)

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