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小さなリズム ~ 櫃田伸也展2011年01月22日 00時17分20秒

恒例の東郷青児美術館大賞受賞記念の展覧会ですが、今年は抽象画の櫃田信也(ひつだのぶや)(1941-)が選ばれています。櫃田は東京藝術大学で油絵を学び、卒業後は愛知県立芸術大学などで後輩を育成しながら、創作活動を続けてきたそうです。

櫃田伸也

最近では、あいちトリエンナーレにおいて、後輩で教え子でもある奈良義智(1959-)などとアートイベントを立ち上げるなど活発な活動をしています。『通り過ぎた風景』と題したシリーズなど、どこにでもあるような風景を具象部分を残し、かつ、抽象化するような作品を手掛けています。

大賞受賞作の『不確かな風景』は、その代表的な作品と言えます。控えめな色調が全面を占めているのですが、中心になる形には原色に近いはっきりした色を使い、アクセントを持たせています。リズミカルで心地良い配置に安心感があると思います。

風景画としては、ユトリロ(1883-1955)の作品を意識しているようにも思いますが、リズムというところからは、デュフィ(1877-1953)を加えているような感じがします。あさぎが良いなと思った作品は、他の作品と違い青をメインの色に使った『洪水』という作品です。

櫃田伸也
櫃田信也「洪水、2003」

少しメルヘンチックな感じもして、とてもきれいな仕上がりになっています。洪水というよりも、水中に沈んだ世界のように思います。中心にある家は廃墟のようで静寂を演出するのですが、部屋や壁の作りが小さなリズムを奏でているような感じがします。とても静かで深い世界に迷い込んだ気分です。

※損保ジャパン東郷青児美術館

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